2019年9~10月、新聞各紙やテレビは量子コンピューターの話題で持ちきりになった。米Googleが量子ゲート型量子コンピューターを開発し、その計算能力がスーパーコンピューターをはるかに超える「量子超越性」を実証したとする論文を大手紙に事実上リークし、期待を高めた上で実際に論文発表したからだ1)。「人類は超計算を手にした」と派手な見出しが躍ったメディアもあった。
「200秒」VS「1万年」が根拠
Googleの発表内容は、同社が開発した54量子ビットの量子プロセッサーで、量子乱数生成のシミュレーションを53量子ビットを用いて回路深度†20の規模で実行したところ、200秒の計算時間で済んだ。対して、現在最大規模のスーパーコンピューターである米IBM製「Summit」で同じ計算をしたところ、計算はほとんど進まず、完了までに推定1万年かかることが分かったとする(図1)。「この劇的な高速化は、特定の計算に関する量子超越性の実証である」(論文要旨)。「200秒」VS「1万年」という対比が、その論拠の根幹になっている。