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紺青色にプルシアンブルーを用いている葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
紺青色にプルシアンブルーを用いている葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
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 既存のリチウム(Li)イオン2次電池の性能向上に対する閉塞感が高まる中、Liイオン以外の電池内キャリアを用いる2次電池技術に注目が集まっている。その代表例がナトリウム(Na)イオンを用いた2次電池(NIB)だったが、ごく最近になって、カリウム(K)イオンを用いた2次電池(KIB、またはPIB)にも脚光が当たり、論文数が急増している(図1注1)

図1 約10年の時を超えて脚光
図1 約10年の時を超えて脚光
Kイオン2次電池やKイオンキャパシターについての年間論文数の推移。2004年にイランの研究者が正極にプルシアンブルー、負極にK金属を用いた2次電池を発表したが、10年以上顧みられなかった。2015年に東京理科大学の駒場研究室が、負極にグラファイトを用いて、LIBと同様なインターカレーションで動作するKイオン2次電池(KIB)を提唱。2017年には、この負極とマンガンを一部含むプルシアンブルー正極で4V級のKIBを開発した。これらの研究によってKIBに注目が集まり論文が急増。2019年には約300本の論文が発表された。(図:東京理科大学 駒場研究室
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注1)LIBがそうであったように、KIBの発展にも日本の研究者が大きく貢献している。負極にK金属を用いたK2次電池は2004年にイランの研究者が開発したが1)、Kイオンが正負極でインターカレーションするKIBを初めて作製したのは、東京理科大学 教授の駒場慎一氏の研究室である2)
インターカレーション=イオンが電子のやり取りを伴わずに電極材料の隙間に出入りする形で充放電を担うこと。この場合、電極外部端子との電子のやり取りは、電極材料中の元素の価数が変わるなどして行われる。