「人間の肉眼は5億画素相当。我々はそれを超える6億画素のイメージセンサー実現を目指すことで技術の限界に挑戦する」─。韓国Samsung Electronicsは2020年4月、同社EVP、Head of Sensor Business Team、 System LSI BusinessのYongin Park氏の寄稿という形で、今後のCMOSイメージセンサーの開発戦略を発表。その中で、同センサーの画素数としては常識を超える数字を目標として挙げた。これは2019年からの同社のスマートフォン向け製品の大幅な多画素化の流れを受けた発言といえる(図1)注1)。
半年で画素数を2倍超に
具体的には、2019年初頭にSamsungとして初めてこの分野のイメージセンサーでソニーの製品に画素数(4800万画素(48MP))で並んだ。画素ピッチはソニーの0.8µmを超える0.7µmだった。その後約0.8µmに戻したものの、画素数は大きく増やし、2019年8月には1億800万画素(108MP)のCMOSイメージセンサー「ISOCELL Bright HMX(S5KHMX)」を発表。それを採用したスマートフォンも続々と出ている。中国Xiaomiのスマートフォン「Xiaomi Mi Note 10」など6機種や、Samsung製「Galaxy S20 Ultra」、中国OPPOの「Reno3 Pro」などだ。さらに本誌推定で米Motorola Mobilityの「Motorola Edge Plus」も採用したもようだ注2)。
108MPで撮影した映像は等倍では12MPとほとんど区別が付かないが、「100倍ズーム」(Samsung)といった高倍率のデジタルズームを前提にすれば一定の意味がある。
Samsungは今後も多画素化のスピードを緩める気配はなく、2020年3月には1.5億画素(150MP)のCMOSイメージセンサーを開発中で、Xiaomiの2020年第4四半期以降のスマートフォンに採用されるとの噂もある注3)。冒頭の6億画素の発表は、こうした多画素化路線がスマートフォンのメーカーに支持されたことへの自信の表れといえる。発表にソニーの名前こそないが、CMOSイメージセンサーの市場シェアで約50%を握る盟主ソニーに、2位(同約19~20%)のSamsungが超多画素化競争を仕掛けた挑戦状とも読める。