全3037文字
PR
「CaFH複合材触媒」(出所:東京工業大学)
「CaFH複合材触媒」(出所:東京工業大学)
[画像のクリックで拡大表示]

 自然エネルギーと簡単な装置で、あちらこちらでアンモニア(NH3)が生成できるようになる─。そんな研究が日本で進んでいる。2020年4月、アンモニア合成に関わる技術を東京工業大学と大阪大学が相次いで発表した。東京工業大学は50℃未満・常圧で働く触媒、大阪大学は常温・常圧で働いて太陽光(紫外線)と海水などからアンモニアを生む触媒を開発した。いずれも実用化に至れば、水素社会実現への強力な武器となり得る。

 余剰の自然エネルギーを蓄電するための物質として、水素(H2)に注目が集まっている。しかし金属を腐食させるなどの理由から輸送・貯蔵での課題も多い。そこで水素を固定するための媒体として有望視されているのがアンモニアだ。水素よりも沸点が高く、液体になりやすいため、貯蔵・運搬に向く。加えてアンモニアから簡単に水素を生成できたり、アンモニアで動作する燃料電池などからエネルギーを取り出せたりする。

 ただアンモニアを水素の固定化物質として使うのには課題がある。現時点では、合成に大量のエネルギーが必要なのだ。アンモニアは今日まで100年以上の歴史を持つハーバー・ボッシュ法で大量生産を行ってきた。同法では主に酸化鉄(Fe3O4)の触媒を使い、条件として200気圧以上という高圧、450℃以上という高温が必要である。

 一方で新しい触媒技術を使えば、常圧・低温な条件下、窒素と電気分解などで作り出した水素を使って、少ないエネルギーでアンモニアを生産できることから、アンモニアが水素固定化のより有力な選択肢に近づく。また装置も簡易化できる。