全1722文字
PR
オンラインで実施した報道機関向け発表会で研究成果を紹介する京都大学の木本氏(撮影:オンライン会見を日経クロステックがキャプチャー)
オンラインで実施した報道機関向け発表会で研究成果を紹介する京都大学の木本氏(撮影:オンライン会見を日経クロステックがキャプチャー)

 SiC MOSFETにおける積年の課題の解決に向けた道筋が見えてきた。京都大学と東京工業大学の研究グループは、SiC MOSFETのゲート酸化膜の界面で生じる欠陥の密度を約1/10に低減した。新たな作製プロセスで実現した。欠陥の低減により、パワーエレクトロニクスで需要が多い耐圧600~1200V級のSiC MOSFETの性能向上やコスト削減を見込める。

 例えば、オン抵抗を数分の1まで小さくしてチップ面積を縮小し、1枚のSiC基板(ウエハー)から製造できるチップ数を増やしてコストを数分の1にできる可能性がある。SiC MOSFETはSi IGBTに比べて低損失、スイッチング周波数を高めやすいなど、優れた性能を備えるものの、コスト高が課題だった。今回の成果は、京都大学大学院工学研究科 教授の木本恒暢氏と東京工業大学科学技術創成研究院 特任准教授の松下雄一郎氏、博士研究員の小林拓真氏らのもので、2020年8月14日に国際学術誌「Applied Physics Express」にオンライン掲載された。

 SiC MOSFETのオン抵抗を下げるには、各種抵抗成分の削減が必要だ。中でも、需要が多い耐圧600~1200VのSiC MOSFETでは、オン抵抗に占める「チャネル抵抗」の比率が高い。だが、酸化膜界面に生じる欠陥によって、チャネル部を移動する電子の移動度を上げにくく、チャネル抵抗を下げにくかった(図1)。これは、SiCパワー素子業界の「30年来の大きな課題」(京大の木本氏)だった。

図1 SiC MOSFETの課題
図1 SiC MOSFETの課題
SiC、SiO2の界面に高密度の欠陥があり、これが移動度を小さくしている。(図:京大と東工大の研究グループ)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回、酸化膜の形成プロセスに新たな手法を導入することで、この課題解決に道筋を付けた。形成したSiO2膜(酸化膜)の信頼性を調べたところ、問題ないことを確認した(図2)。例えば、絶縁性と電圧ストレス耐性を調べた。

図2 信頼性に関する特性を調べた結果
図2 信頼性に関する特性を調べた結果
絶縁性もストレス耐性も良好だった。(図:京大と東工大の研究グループ)
[画像のクリックで拡大表示]