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 「毎分1000回転で回れ」、「障害物が10cm以内に接近したら通知せよ」─。

 こんな簡単な命令を送るだけで、モーターやセンサーを使いこなしてくれるアナログICをロームが開発中だ。従来のシステムでは、アナログICに頭脳はなく、ホストプロセッサーから送られてくるデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する機能しか持たなかった。モーターを回転させるための演算処理、超音波センサーの出力信号から距離を計算する処理などはすべてホストが実施していた。今回、独自開発の8ビットマイコンを搭載することで、こうした演算をアナログIC側に持たせることができる。モーターやセンサー、電源ICを駆使したシステムの開発に大きな変革をもたらす可能性がある。

両者に大きなメリット

 ロームがホストプロセッサーでの集中処理から、アナログICでの分散処理への移行を目指すのは、半導体のユーザー側である電子機器メーカーと、サプライヤー側であるロームの双方が大きなメリットを得られることにある。

 ユーザー側のメリットは3つある。1つは、ホストプロセッサーの演算負荷を軽減できることだ(図1)。この結果、電子機器全体の消費電力や部品コストを削減できるようになる。

図1 集中処理から分散処理へ
図1 集中処理から分散処理へ
これまでホストプロセッサーで演算処理していた距離計算や回転速度計算を、アナログICに移行させる。つまり集中処理から分散処理に移行することで、ホストプロセッサーの負荷を軽減できる。(図:ローム)
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 2つは、配線の本数を減らせることである。3相モーターの駆動であれば、従来はホストプロセッサーとモーター駆動ICを結ぶ配線は少なくとも6本必要だった。2本で1相分の制御信号を送信する必要があるからだ。分散環境に移行できれば、コマンドを送るための信号線1本に減らせる。放射電磁雑音(EMI)の低減や基板の簡素化にもつながる。

 最後が仕様変更や設計変更に柔軟に対応できることだ。アナログICは、搭載する機能や端子設定などが固定されているため、機器の仕様が変更されればアナログICの周辺回路に大幅な設計変更が強いられたり、使用するアナログIC自体の変更が求められたりする。8ビットCPUを搭載しておけば、ソフトウエアを書き換えるだけで仕様変更に対応できる。

 一方で、ロームのメリットも極めて大きい。最大のメリットは、1つの基本的なアナログICを用意しておけば、ソフトウエアを替えるだけで、機能や仕様が異なる様々なアナログICを市場に投入できることだ。ユーザーの要求は千差万別であるためアナログIC事業で成功を収めるには品ぞろえの拡充が極めて重要な要素になる。8ビットCPUを集積しておけば、ICとしては少品種だが、外部的には多品種という状況を比較的簡単に達成できるようになる。

 さらに設計期間を大幅に短縮できることもメリットとして挙げられる。従来は、ユーザーから仕様を提示されてから、試作チップを完成させるまでに数カ月必要だった。しかし、8ビットCPUを集積しておけば、この期間をわずか数日から数週間に短縮できる。