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QuantumScapeが試作した単層の全固体電池セル。寸法は85mm×70mm。(写真:QuantumScape)
QuantumScapeが試作した単層の全固体電池セル。寸法は85mm×70mm。(写真:QuantumScape)
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 米国の全固体電池開発のベンチャーが、トヨタ自動車を脅かす存在として台頭してきた。米QuantumScapeだ。同社は米Stanford University発のベンチャー企業で、創業は2010年。ドイツVolkswagenや米Microsoftの共同創業者であるビル・ゲイツ氏が出資していることで何かと話題になってきた。

 ただし、電池の開発状況については長らくステルスモードで謎に包まれていた。数年前に同社が日本で講演したことがあったが、その内容は競合他社の特許情報や開発の方向性などを調べ上げて、どういった技術が望ましいかについて一般論を述べただけにとどまった。

 ところが、同社は2020年9月に逆さ合併の手法で株式市場に上場後、2020年12月8日には、開発した全固体電池技術の詳細を発表した。これに最近発表した内容を加えると骨子は以下のようになる。

(1)室温での重量エネルギー密度は300超~400超Wh/kg、体積エネルギー密度は1000Wh/L前後で、EVの航続距離は既存のリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)の1.8倍と長い

(2)負極には金属Liを使うが、過剰なLiはない「Zero excess」または「負極レス」のLiイオン系2次電池

(3)セパレーター(固体電解質)はセラミックであり、不燃性で耐熱性も高く、たとえ熱でLi金属が溶融しても化学的に安定

(4)放電状態から15分で充電率80%にまで充電できる

(5)充放電サイクルは800回以上で、放電容量は初期値の80%以上を維持

(6)-30℃でも動作

(7)試験的な製造は2023年以降、本格的な量産は2025年以降

 このうち(1)はやや解釈が難しい(図1)。既存の車載向けLIBの体積エネルギー密度は約700Wh/L超。QuantumScapeの新型電池はその約1.3倍しかない。にもかかわらず航続距離は1.8倍だとするからだ。考えられるのは、セルをパッケージ化した際のエネルギー密度の低下幅が小さい可能性だ。

図1 高い体積エネルギー密度を誇る
図1 高い体積エネルギー密度を誇る
セルの重量エネルギー密度は300超~400超Wh/kg、体積エネルギー密度は1000Wh/L前後。既存の車載向けLIBは700Wh/L超で、それよりも3割も高い。(図:QuantumScape)
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 実際、同社は2021年2月に、セルの多層化に成功したと発表した。これは液体電解質の電池では非常に難しく、全固体電池ならではの技術といえる。パッケージ化によるエネルギー密度低下幅の抑制につながる。