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新手法でDRを拡大

 DRを広げるために、新たな手法を導入した。既存手法は一長一短があり、今回のような成果を達成するのが難しかった(図2)。例えば、カウンター回路を多ビット化して、DRを広げる手法がある。SPADセンサーでは光子が入射すると、パルス状の電圧信号(トリガーパルス)が生じる。このパルスの数をカウンター回路で検出してカウントする(数える)。このとき、カウントできる光子の数が多いほど、明るい場所を撮影できる。120dB超のDRを実現するには、100万個の光子をカウントできるように、20ビット超のカウンター回路が必要になるという。

図2 SPADセンサーにおけるDRを広げる手法の比較
図2 SPADセンサーにおけるDRを広げる手法の比較
暖色の部分が欠点で、寒色の部分が利点。今回の手法は欠点がほぼないという。(出所:ISSCCとソニー)
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 ただし、カウンター回路のビット数が多いほど、回路規模が大きくなり、消費電力が増えるという課題が生じる。もともとSPADを利用するイメージセンサーの読み出し回路は、一般的なPD(Photo Diode)を利用するイメージセンサーに比べて規模が大きく、画素数は回路規模に左右される。このため、回路規模が大きいと多画素化しにくくなる。

 この問題を解決するために、カウンターのビット数を抑えつつ、DRを広げるために、暗所撮影向けと明所撮影向けでそれぞれ動作モードを切り替え、複数の画像を合成する方法がある。例えば、暗所向けにSPADモードで撮影し、明所向けに一般的なフォトダイオード(PD)として撮影する。あるいは、暗所撮影向けに露光時間を長くし、明所撮影向けに露光時間を短くする。こうした方法であれば、数ビットのカウンターで100dB以上のDRを実現できる。ただし、複数回の読み出しが必要になるので、その分フレーム速度を高めにくいという課題がある。加えて、2つのモードを切り替える際に、SNRが悪化する現象(SNR dip)が生じてしまう。