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ギ酸(水溶液)
(写真:日経クロステック)
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豊田中央研究所は2021年4月21日、太陽光と二酸化炭素(CO2)、および水(H2O)からギ酸†の塩を合成する人工光合成技術で、太陽光からギ酸へのエネルギー変換効率7.2%を実現したと発表した。この成果は学術雑誌「Joule」にも掲載された1)。
†ギ酸(HCOOH)=メタノールを酸化すると、ホルムアルデヒドを経由して得られる化学物質(英語ではformic acid、塩はformate)。蟻(アリ)の毒腺の成分でもあるため、この名がある。国内では家畜用飼料の防腐剤、皮なめし用材料、医療食品向けなどに年間約70万トンが使われている。
豊田中央研究所は10年以上前からCO2の再資源化技術として、人工光合成技術の研究を続けてきたとする。当初の発表は2011年で、当時の変換効率は0.04%。2015年にはほとんどの植物を上回る4.6%にまで高めた。ただし、セルは1cm角と小さかった。今回の7.2%は「世界最高水準」(豊田中央研究所)で、しかもセル(電極)の寸法を36cm×36cmと大幅にスケールアップした装置を用いている(図1)。既に次のステップとして同1m×1mという大型装置の開発を進めていることも明らかにした(図2)。
図1 豊田中央研究所が開発した電極寸法が36cm×36cmの人工光合成装置
左が太陽光を当てる側の様子。太陽電池が見えている。中央は装置の側面から見える5組の電極。右は装置の裏側。(写真:日経クロステック)
(a)約10年前の開発品
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(b)実用化を想定した大型装置(電極1m角)
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図2 1cm角から始まり、次は1m角へ
10年前の開発当初は電極寸法が1cm角だった(a)。次の電極寸法は1m角(外観1.6m角)で既に疑似太陽光を用いた稼働試験を始めている(b)。ギ酸を約40mL/時のペースで合成できるという。(写真:日経クロステック)