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実証実験の様子。150人がグラウンドで動き回る状況を想定した。(写真:OKI)
実証実験の様子。150人がグラウンドで動き回る状況を想定した。(写真:OKI)
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 沖電気工業(OKI)は、学校の運動場などに散らばって動き回る大勢の人の生体情報を、センサー無線ネットワークを用いてリアルタイムに取得することに成功した。実証実験では、運動中の人の体温や脈拍などの生体情報を90%以上のデータ収集率で取得できることを確認した。

 この技術は、情報通信研究機構(NICT)の委託研究に基づき、大阪市立大学、関西大学、明治大学、ソリトンシステムズと共同開発した。運動会や遠足などの教育現場で、高速移動(最大10m/秒)する数百人規模の生徒の体調を、10秒以下の低遅延でモニタリングする体調管理システムの構築を目指す。

920MHzのマルチホップ無線採用

 昨今、深刻化する夏場の猛暑の影響で、教育現場において熱中症などによる運動中の生徒の体調不良が大きな問題になっている。運動中の人間の生体情報を計測してモニターするシステムはトップアスリート向けには商品化されているものの、運用コストが高い、通信距離に制約がある、など教育現場への適用には向かない。

 こうした用途で使える無線通信技術としては、LTEや5G、Wi-FiやBluetoothなど2.4GHz帯が選択肢としてある。しかし、LTEや5Gは機器が高価で利用料がかかる上、消費電力が大きい。2.4GHz帯は運動場で使うには通信距離が短く基地局が複数必要になるなどの欠点がある(図1)。

図1 920MHz帯を使う理由
図1 920MHz帯を使う理由
運動場など広い場所で大人数のデータをリアルタイム、かつ低コストで取得することを目的とする場合、ライセンスが不要で低コスト、かつ通信範囲が広い920MHz帯が適している。Wi-FiやBluetoothなど2.4GHz帯はシステム構築は容易だが、通信距離が短く、数百人以上の多数のノードには対応しづらい。LTE、5Gといったセルラーはコストが高い問題がある。(図:OKIの資料を基に日経クロステックが改訂)
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 OKIは今回、ライセンスが不要な920MHz帯の特定小電力無線の技術をベースに開発した。同社が既に商品化している920MHz帯の無線技術だと15〜20cm大のアンテナを使って、見通しで1kmの通信ができる。しかし、小中学校向けなので腕に装着するセンサー内蔵の無線装置(ノード)を小型化する必要があり、その関係でアンテナの寸法を親指の爪より一回り大きい程度にまで小さくした。この影響で、通信距離は100mにまで短くなり、運動場でのデータ取得という要件を満たせなくなった。