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変換効率18.4%を実現した研究室のOPVの試作例(写真:KTU)
変換効率18.4%を実現した研究室のOPVの試作例(写真:KTU)
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 「塗って作れてしかも安い」あるいは「紙のように曲がり、そして軽い」といった性質を持ち、それでいて非常によく発電する夢の太陽電池の実現が近づいてきた。有機材料を積層してできる「有機薄膜太陽電池(OPV)」の変換効率がこの2年半で急上昇し、最新の研究成果では18%半ばに達しているのだ。高性能な多結晶シリコン(Si)型太陽電池に匹敵する値で、ドイツの研究所であるMax Planck Institute for Polymer Research(MPI-P)の研究者は「近い将来の20%達成もあり得る」とみる。ほんの5~6年前まで、OPVの変換効率は10%前後がやっとだった状況からすると大きな飛躍だ。

サウジと中国が開発をけん引

 現在、変換効率が最も高いのは、サウジアラビアの大学King Abdullah University of Science and Technology(KAUST)、およびリトアニアの工科大学Kaunas University of Technology(KTU)が2021年4月に共同で論文発表した、変換効率18.4%のOPVだ(図11)。続く同5月には、中国の華南理工大学がそれに肉薄する18.38%のOPVを発表している。約2年前から中国の大学とKAUSTがOPVの開発競争でデッドヒートを繰り広げ、OPVの変換効率が大幅に向上した。この約1年で、変換効率18%台を実現した開発例だけで少なくとも6件ある。一発屋的なチャンピオンデータではなく、この分野の底上げが進んでいるわけだ。

図1 単接合有機薄膜太陽電池の最近の変換効率の推移
図1 単接合有機薄膜太陽電池の最近の変換効率の推移
中国・中南大学の15.7%を皮切りに、変換効率が急上昇した。KAUSTはサウジアラビアの大学。(図:日経クロステック)
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単接合型のままで高効率に

 OPVの変換効率は2010年代前半は10%前後と伸び悩んだ。その後、変換効率は急速に高まり、2018年半ばには17.3%を記録した。

 ただし、当時の開発成果の多くは、光吸収域が異なる2つの太陽電池を重ねて作製する「タンデム型」だった。2つのpn接合を持つので「2接合」とも呼ぶ。一方、pn接合が1つだけの単接合型OPVの変換効率は2018年半ば時点では14.2%が最高値だった(日経エレクトロニクス誌調べ)。

 2019年になってこの流れが大きく変わった。画期的なアクセプター(有機のn型半導体)の非フラーレンアクセプター(NFA)「Y6」が開発され、以前に開発されたドナー(p型)の「PM6」と組み合わせることで、単接合型でも15%を超える変換効率のOPVを作製可能になってきたのだ2)

 その後はタンデム型ではなく、単接合型に研究開発の軸足が移った。そして2020年初頭には17.1%、同年半ばには18%台のOPVが登場し、タンデム型を超えた。最新の18%半ばのOPVもこの流れの延長といえる成果である。現時点では、ドナーとして「PM7」、アクセプターとして「Y7」といった材料も開発されている。