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アミン系の浸透圧物質(上)と水(下)が分離しているところ(写真:東芝)
アミン系の浸透圧物質(上)と水(下)が分離しているところ(写真:東芝)
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 省エネルギーかつ高濃縮が可能になる新しい濃縮技術を東芝が開発した。東芝は、この方法を食塩水の濃縮に使った場合、(1)濃縮時の消費エネルギーを「逆浸透膜(RO膜)法」の4分の1に節約でき、(2)同法よりも2.4倍高濃縮になるだけでなく、(3)濃縮したい物質に対して加熱や加圧をしないため品質劣化を防げるというメリットがある、とする。

自発的に水が移動

 今回の技術は、「正浸透膜(FO膜)法」という浸透プロセスによって、水だけを別の容器に移動させることで濃縮するというもの(図1)。水だけを透過させるFO膜を挟んで、溶質濃度が異なる2つの溶液を配置する。なおここでの溶質とは、濃縮したい物質ではなく、水を吸引する作用がある「浸透圧物質」を指す。すると、浸透圧物質の濃度差を均一にしようとする水流が発生して、濃度の低い溶液から高い溶液へと水が自発的に移動する。比較技術のRO膜法は、濃縮したい溶液に浸透圧以上の圧力をかけて水を移動させるため、圧力をつくるエネルギーを要する。

図1 省エネかつ高濃縮を達成したFO膜による濃縮技術
図1 省エネかつ高濃縮を達成したFO膜による濃縮技術
FO膜法による濃縮の実験装置を示した。右の濃縮したい溶液から、左の浸透圧物質の溶液へと、FO膜を通って自発的に水が移動する。低圧ポンプは各容器に溶液を供給するのに使っている。(写真:東芝)
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 ただし、FO膜法はこのままだと、濃縮するうちに濃度差が小さくなって、水の移動がなくなる。濃縮し続けるためには、浸透圧物質の入った溶液から水だけを排出して、再び濃度差をつくる必要がある。つまり浸透圧物質は、「水への溶解」と「水との分離」という2つの状態を自由に制御できることが望ましい。