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 原理考案は約180年前。SFの世界ではおなじみの技術を防衛省が実用化を目指す。防衛省は新たなミサイル防衛の手段として「レールガン」(電磁砲)の研究を本格化しようとしている。レールガンは現行のミサイル迎撃システムよりも、弾丸の発射速度を極めて速くできる。高速化が進む他国のミサイルの脅威に対抗する。ミサイル技術とミサイル防衛技術のいたちごっこが続く状況の中で、レールガンはゲームチェンジャーとなるか。

 防衛省は2022年度の予算案にレールガン関連費用として65億円を計上した。連射や飛しょう時の安定性といった要素技術を確立し、早期実用化にこぎつける。防衛省の外局である防衛装備庁は、1990年に口径16mmの小型レールガンの基礎研究を開始。その後口径40mmの中型レールガンを試作して、弾丸の高初速化や砲身の長寿命化の研究を実施してきた(図1)。

図1 防衛装備庁が21年までに試作した口径40mmのレールガン
図1 防衛装備庁が21年までに試作した口径40mmのレールガン
(出所:防衛装備庁)
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 レールガンの主な用途は極超音速〔マッハ5(約1702m/秒)以上〕の巡航ミサイルの防衛だ。極超音速巡航ミサイル防衛では「迎撃側も極超音速で会合点に向かって飛しょうするのが重要」(防衛装備庁)で、レールガンは高速化のポテンシャルが極めて高いため、適性が高いと判断したようだ。

 実際、同庁の試作レールガンでは2230m/秒(約マッハ6.6)の初速で重量約300gの弾丸を発射できるという(図2)。同庁は搭載プラットフォームを公開していないが、用途から考えれば自衛隊駐屯地やイージス艦に搭載する可能性が高い。

図2 防衛装備庁が21年までに試作したレールガンの弾丸
図2 防衛装備庁が21年までに試作したレールガンの弾丸
装弾筒と弾心から成り、戦車の主砲などに使用される分離弾「APFSDS(Armor-Piercing Fin-Stabilized Discarding Sabot)」に似た構成だ。「レールガンの高初速を生かすには、弾心にタングステンを使った分離弾が向く」(関係者)という。防衛装備庁によれば、レールガンに誘導装置を搭載するかなどは「現時点では未定」(同庁)という。また同庁では、レールガンのメリットに「弾丸サイズが小さいため、探知されにくい」ことも挙げている。(出所:防衛装備庁)
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APFSDS=運動エネルギーによって対象を破壊する弾丸兵器「運動エネルギー弾」の1つ。主に軽い装弾筒と、重い弾心で構成される。発射時のエネルギーを装弾筒が受け、発射後に装弾筒と弾心が分離。重い弾心に運動エネルギーが集中する。弾心には安定翼が付き、弾道の安定化を図っている。