全2576文字

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が公約した、半導体人材を10万人育成する方針を巡って、韓国内が揺れている。産業界が賛同する一方、教育界からは異議を唱える声が噴出しているからだ。なぜ教育界が反発するのか。

 複数の韓国メディアによると尹大統領は2022年6月7日(現地時間)、日本の文部科学省に相当する韓国・教育部(部は省に当たる)の次官に対し、半導体人材10万人育成の達成に向けて韓国の首都圏にある大学の半導体学科の定員を増やすよう求めた。しかし次官は「地域で均等な発展を目指すために、同大学の入学定員を制限している」と説明。それに対し尹大統領は「国の未来がかかっている」と、次官の説明を一蹴したという。

 同大学は、首都圏への一極集中を避けるため、1982年に制定された首都圏整備計画法に基づいて定員を制限している。過去に何度も先端産業の人材不足を解消するために、半導体学科などの定員を増やす議論があった。しかし韓国では急速に少子化が進み、首都圏の大学定員を増やすと地方大学に学生が来なくなるという懸念から、これまで規制緩和には至っていない。