全3729文字
PR

 さまざまな産業で電化が進み、パワーエレクトロニクスへの期待が高まっている中、豊田合成は「GaN(窒化ガリウム)」に挑んでいる。狙うのは、電動化の加速をにらんだモビリティーやエネルギーソリューションへの貢献だ。GaNは、現行のSi(シリコン)、そして今まさに普及期を迎えているSiC(シリコンカーバイド)を上回るポテンシャルを持つ。条件が整えば、将来の車載パワー半導体の筆頭に名乗りを上げそうだ。

 同社がGaNの研究に取り組み始めたのは、1980年代にさかのぼる。実現困難とされてきた青色発光ダイオード(LED)の発光源として有力視し、後にノーベル物理学賞を受賞する名古屋大学(当時)の赤﨑勇氏や天野浩氏らと共同研究を重ねた。青色の発光を初めて確認した場所も、豊田合成の研究室だったという。照明用のLEDがコモディティー化する中、パワー半導体で再び GaNの最先端を目指す。

 同社はこのほど、単結晶の製造が困難とされるGaNで、6インチという大型基板を作製することに成功した。大阪大学大学院 工学研究科 教授の森勇介氏の研究室などと共同開発した。高品質で、安価なGaN基板を作製するエコシステムのきっかけになりそうだ。まだ基礎研究レベルの成果ではあるが、「今回の開発によって、GaNのサクセスストーリーが見えてきた」(同社 取締役・執行役員 カーボンニュートラル・環境推進部 担当本部長、開発本部 技術渉外担当の石川卓氏)と自信をみせる。同社では基板と並行してGaNデバイスの開発も進めており、将来的にはデバイスで市場を狙う。

 同社が開発している基板は既に実用化済みのGaNデバイスに向けたものではない。GaNパワーデバイスには、主に「横型(GaN on Si)」と「縦型(GaN on GaN)」の2種類があり、現在普及しているデバイスは横型だ。横型は素子表面のみに電流が流れる構造のため、電流の通り道が狭く、基本的に大きな電力を扱えない。一方、豊田合成が開発するのは縦型タイプ。こちらは素子全体に電流が流れるため、大電力を扱え、幅広い機器に汎用的に用いることができる(図1)。

図1 豊田合成が狙うのはGaN on GaN
図1 豊田合成が狙うのはGaN on GaN
材料ごとのパワー半導体の大まかな性能分布。豊田合成が開発するのはGaN基板上にGaNデバイスをつくる縦型(GaN on GaN)である。大電力を扱いながら、高周波駆動が可能であるため、大電力かつ小型のインバーターを実現できる。現在実用化されているGaNデバイスは、主にSi基板上にGaNデバイスをつくる横型(GaN on Si)であるため、流せる電流や耐えられる電圧に限界がある(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]