先端半導体製造に欠かせないEUV(極端紫外線)露光装置の生産で、世界市場をほぼ独占するオランダASML。そんな同社が韓国に新たな拠点を設けた。ASMLにとっては初の海外への大型投資だ。韓国では、米国による中国に対する半導体制裁により中国から撤退する企業が増えるなか、半導体製造の中心が韓国へと移動することを期待している。韓国は漁夫の利を得ることができるのか。
ASMLが韓国に拠点
ASMLは2022年11月16日(現地時間)、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の工場がある韓国・華城(ファソン)で、新たな半導体拠点「ニューキャンパス」の起工式を実施した。ASMLの韓国のニューキャンパスは、面積7万3000平方メートルの広さを誇る。EUV露光装置の維持補修と部品を再利用する「再製造センター」や、半導体人材育成のための「トレーニングセンター」などが入る場所だ。同社は2400億ウォン(約248億円)を投資した。2024年12月に入居予定である。ASMLが海外で大型投資をするのはこれが初めてだ。
今やASMLは世界でほぼ唯一、先端半導体の製造に欠かせないEUV露光装置を製造するメーカーだ(図1)。EUV露光装置は年間50台ほどしか生産できない。世界の半導体メーカーが1台でも多くEUV露光装置を確保しようと「ASML詣で」を重ねている。
ASMLのニューキャンパスが完成すると、韓国内でEUV露光装置の維持管理がしやすくなる。修理のため装置をオランダにあるASMLの本社まで送る必要がなくなる。ASMLが半導体製造装置の部品を韓国内で調達する可能性もある。
同社CEO(最高経営責任者)であるピーター・ベニンク氏は、ニューキャンパスの起工式のために韓国を訪問した。同氏は記者会見で「韓国は先端技術を保有する協力会社が多く、シナジー効果は大きい」「ニューキャンパスは知識移転の始まり。知識移転に5年から10年はかかるため、再製造センターを皮切りに韓国でR&D基盤を拡充していければ、韓国に製造ラインを作る可能性もある」などと語った。