NTTが2030年代の情報通信基盤を塗り替えようと一丸となって取り組む「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想。その第1弾となる「IOWN1.0」が早くも2023年3月に商用サービスを開始となる(図1)。超大容量かつ超低遅延の通信基盤となる「APN(All Photonics Network)」を使ったサービスだ。IOWN1.0として登場するAPN、そしてその後も続くIOWNの進化は、情報通信市場にどのようなインパクトを与えるのか。その実力に迫る。
「2023年3月にIOWN1.0としてAPNサービスを商用化する。従来の200分の1まで遅延を抑えられる。これだけ低遅延なサービスを展開するのは世界で初めてでエポックメーキングだ」─。
NTT社長の島田明氏は2022年11月14日に開催した説明会でこのように力を込めた。
IOWN構想とはNTTが2019年に公表した次世代情報通信基盤構想のこと。低消費エネルギーという特徴を持つ光技術を、コンピューティング基盤から通信に至るまで活用し、世界の情報通信基盤を根本から変えていこうという壮大な構想だ。目標とする電力効率は現在の100倍、伝送容量は同125倍、エンド・ツー・エンドの遅延は同200分の1と野心的な目標を掲げる。
今回商用サービスを開始するAPNとは、IOWN構想の主要な構成要素の1つであり、超大容量かつ低遅延を実現する通信基盤である。現在、都市間を結ぶような中継系のコアや都市内を巡らせるメトロネットワークに使われる光伝送技術を末端となるエンドユーザー近くにまで拡張。「1人1波長」のように超大容量の光のパスを用途ごとに柔軟に構成できるようにした。オンデマンドで1対1の光の専用線を張るようなイメージだ。