「日本のモバイルネットワークが、世界に出遅れるのを見るのは初めてだ。日本は5G(第5世代移動通信システム)の展開を加速する必要がある」─。こう警鐘を鳴らすのは、スウェーデンの通信機器大手Ericsson(エリクソン)の日本法人エリクソン・ジャパン社長を務めるLuca Orsini(ルカ・オルシニ)氏だ(図1)。
日本で5Gの商用サービスが始まってから早3年弱が経過した。5Gエリアは拡大しているものの、利用者が5Gならではのメリットを感じるケースは少ない。
それは各種ネットワーク品質の調査にも表れている。
例えば独立系調査会社の英Opensignalが2022年9月に公表した調査では、2022年5月から7月にかけて、東京都内の5G平均接続率が7.3%にとどまった。東京・山手線における5G平均接続率は17.2%と高いものの、山手線から外れると接続率ががくんと落ちる。
エリクソンの調査によると、日本の移動通信基地局のうち5G基地局が占める割合は19%にとどまるという。日本においてはまだ4G基地局が主流ということだ。実はこの19%の5G基地局の中には、4G電波を5Gに転用した分も含まれている。世界で主流になりつつある、5Gならではの体感品質向上を得られるSub6帯(2.5G~6GHz帯)の5G基地局は、わずか9%しかないという(図2)。
日本の5G速度は近隣諸国・地域と比べてかなり見劣りする、というショッキングな調査結果もある(図3)。エリクソンがインターネットの速度計測アプリ「Speedtest」を運営する米Ooklaのデータを分析したところ、2022年4~6月の期間において、韓国の5G下り速度の中間値が536.2Mビット/秒、台湾は同309.5Mビット/秒、中国は同296.3Mビット/秒のところ、日本の5G速度はわずか165.1Mビット/秒にとどまったという。