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 「2018年に家庭用のパーソナルロボットを開発するミッションを発表してからここに至るまでの道のりは、平たんではなかった。だから、これは重要な一歩だ。パーソナルロボットを実現することで、今後はより多くの環境でロボットを動かせるようになる」

 日本最大のユニコーンであるAI(人工知能)スタートアップのPreferred Networks(プリファードネットワークス、PFN)最高経営責任者(CEO)の西川徹氏は、子会社でロボット事業を手掛けるPreferred Robotics(プリファードロボティクス、PFRobotics)が2023年2月1日に開催した家庭用自律移動ロボット「カチャカ(kachaka)」の発表会でこう発言した(図1)。

図1 Preferred Roboticsが開発した家庭用自律移動ロボット
図1 Preferred Roboticsが開発した家庭用自律移動ロボット
中央が「カチャカ」、左右が専用棚の「カチャカシェルフ」。左が2段で、右が3段。カチャカの寸法は幅240mm×奥行き387mm×高さ124mm、重さ10kg。積載荷重は最大20kg、移動速度は最大400mm/秒。RGBカメラを2個、センサーはLiDAR×1、3Dセンサー(ToF)×1、段差センサー×2、家具認識センサー×1を搭載。2023年5月に一般発売を予定(写真:日経クロステック)
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 カチャカ本体は、掃除ロボット「ルンバ」のような姿をしている。これが、車輪がついて自由な方向に動かせる専用棚と連結し、荷物などを載せた棚をけん引してユーザーが指定した場所に移動する。

 PFNは2018年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2018」で、部屋に散らかされたモノを片付けるロボットのデモを披露した(図2)。デモではトヨタ自動車が開発した生活支援ロボット「HSR(Human Support Robot)」が、部屋を模したスペースに散らばったさまざまなモノを認識して所定の場所にしまう様子を見せた。HSRには家庭用ロボットに不可欠な、モノの認識やハンドリングの機能を実装した。さらに、片付けだけでなく、宅配便の受け取りや料理の下ごしらえなど、家庭でのさまざまな雑用をこなすロボットの実現を目指すとした。

図2 「CEATEC JAPAN 2018」で披露した片付けロボットのデモ
図2 「CEATEC JAPAN 2018」で披露した片付けロボットのデモ
トヨタ製ロボット「HSR」を使って、部屋に散らかったさまざまなモノを認識して所定の場所にしまうデモを見せた(写真:日経クロステック)
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 しかし、こうした汎用的な家事ロボットは、ロボット開発の最難関領域の1つと言える。「間取りや床材、家具の種類、そして動き回るペットがいたりと住環境は多様であるためだ」(PFRobotics CEOの磯部達氏)。特に片付けとなると、多様なモノを正確につかんで収納箱などに入れる必要がある。この対象物が決まっていないピッキングは、ロボットにとって非常に難易度が高い。