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 半導体産業への支援を巡って与野党の対立が続いている韓国政府の方針が二転三転している。2022年12月末の韓国国会において可決された、半導体などの設備投資を行った大企業に対し投資額の8%を税額控除するという方針をわずか11日で撤回。2023年1月、追加控除を加えると最大25%を税額控除するという新たな方針を発表したからだ(図1)。韓国政府は当初、大幅な税額控除は難しいという立場だった。産業界の猛反発を受けて方針転換を余儀なくされた格好だ。

図1 サムスン電子の半導体工場
図1 サムスン電子の半導体工場
半導体産業の支援を巡って韓国政府の方針が二転三転している(出所:サムスン電子)
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世界最高水準の税制支援

 韓国政府は2023年1月3日、半導体を含む国家戦略技術の設備投資を行った大手企業や中堅企業に対し投資額の15%を税額控除するという新たな税制支援強化策を発表した。中小企業の場合、25%を税額控除する。

 さらに2023年の期間限定で、直近3年間の年平均投資額を超えて設備投資した場合、追加で投資額の最大10%を控除する。追加控除を含めると、税額控除率は大手企業・中堅企業の場合が最大25%、中小企業の場合に最大35%となる。現在の韓国の税額控除率は大手企業の場合6%、中堅企業が8%、中小企業が16%である。そのため大幅な支援拡大となる。

 日本の財務省に相当する韓国・企画財政部は「半導体設備投資の税額控除率は米国が25%、台湾が5%であり、韓国政府は世界最高水準の税制支援をする」と強調した。支援対象となる国家戦略技術には、ファウンドリー向けの設計IP(Intellectual Property)検証技術や非メモリー半導体のテスト技術などが含まれる。加えて過去最高額である50兆ウォン(約5兆3000億円)規模の政府融資枠も用意した。

 半導体は韓国の主力産業であり同国の経済成長をけん引してきた。しかし2022年から続く景気悪化によって韓国経済は大きな打撃を受けている。韓国の経済団体である大韓商工会議所は半導体産業の景気低迷は2023年末まで続く可能性があると指摘。半導体産業に対する政府支援が必要だとして、半導体設備投資の税額控除の大幅拡大や規制緩和などを求めていた。

 最大25%の税額控除率という大きな支援策を打ち出した韓国政府であるが、実はここに至るまで方針が二転三転している。