2018年12月に米国で開催された電子デバイス技術の旗艦学会「2018 IEDM」における注目の発表を東北大学 准教授の黒田理人氏が解説する。注目したのは、半導体集積回路・デバイス・プロセス技術に関する最新成果だ。次世代メモリーMRAM(Magnetic RAM)、次々世代の「GAA」プロセス、低オン抵抗パワーの半導体、広ダイナミックレンジCMOSセンサーの提案などである。 (本誌)
「2018 IEDM(64th International Electron Devices Meeting)」のテーマは「Device Breakthroughs from Quantum to 5G and Beyond」だった。量子コンピューターから5G(第5世代移動通信システム)とその先を見据えたデバイスの革新を目指したものだ。参加者数は1831人に上り、ここ10年間で最多だった2017年の参加者数を100人近く上回った。
筆者は、東北大学にて半導体集積回路・イメージセンサー分野のデバイス・プロセス技術の研究に従事している。今回のIEDMでは広報分野の副責任者Publicity Vice-Chairを務めた。以下、今回、参加者の注目を集めた発表を紹介していく。
盛り上がりを見せるメモリー
今回のIEDMの特徴の1つは、メモリー関連の先進技術が多かった点だ。高性能メモリーが切り開く脳型コンピューティング技術、米Intel(インテル)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)などによる混載MRAM(Magnetic RAM)搭載の半導体プラットフォーム(製造基盤)技術などの発表が話題を集めた。高速アクセスと大容量を両立したSCM(Storage Class Memory)、NANDフラッシュメモリーやDRAMの次世代技術、そして強誘電性HfO2(ハフニウム酸化膜)によって再び盛り上がりを見せる強誘電体メモリー技術についても注目の発表が相次いだ。
先端ロジック技術については、今後の方向性を示唆する発表が見られた。EUV(Extreme Ultraviolet)露光装置の量産化技術、Samsungによる“3nm世代”GAA(Gate-All-Around)型トランジスタ構造のプラットフォーム、300mmウエハーでの連続的な3次元集積化などである。
メモリーやロジックの微細化を進める「More Moore」技術に加えて、微細化以外の方向性で価値を付加する「More than Moore」技術でもパワーデバイスの性能向上や高性能・高機能イメージセンサー技術についての発表が人目を引いた。