これまでの多くの太陽電池は、単接合型と呼ばれる“1階建て"だった。ここに来て、単接合型のコストパフォーマンスの限界が見えてきており、その壁を突破する2階建ての「タンデム型」が大きな潮流になりそうだ。既に変換効率はSi系太陽電池の世界最高記録を超えた。タンデム型であれば、この高効率に加えて低コストにもできる可能性が高い。
現在、猛烈な勢いで変換効率が向上している太陽電池技術がある(図1)。2014年には13%台だったセル変換効率が2018年6月には27.3%に倍増し、カネカが打ち立てたSi系太陽電池の記録を超えた。同12月には28.0%となり、近い将来の30%台達成はほぼ確実といえる。理論上は37%も見込めるという。
この技術は、異なる種類の太陽電池を2階建ての家のように積層して使う「タンデム型†太陽電池」だ。特に、ペロブスカイト太陽電池(PSC)とSi系太陽電池から成るペロブスカイト/Si系タンデム型太陽電池は、変換効率の向上が著しい。PSC自体、新しい技術で変換効率が向上中だが、既存の結晶Si系太陽電池と組み合わせることでさらに数段上の変換効率を実現でき、それでいて製造コストは比較的低く抑えられる可能性があることから、急速に開発例が増え始めた。
光の“ふるい"が1段だった
太陽電池は、半導体を光の“ふるい"のように用いて所望の光をつかまえ、そこから電力を取り出している(図2)。このふるいの“網目の粗さ"に相当するのが半導体の「バンドギャップ(Eg)」だ。Egが広い(網目が粗い)と、波長の長い(エネルギーが低い)多くの光がすり抜けて「透過損失」が増えてしまう。一方、Egが狭い(網目が細かい)とより多くの光をつかまえられるが、Egよりエネルギーが高い光は、その余剰分が電力ではなく、「熱損失」になってしまう。
単接合型、つまりふるいを1個しか使わない太陽電池のEgには、一般的にこの透過損失と熱損失の合計が最小になる値がある。それが、Eg=1.4~1.5eVで、理論的には変換効率約34%を実現できる。これが単接合型太陽電池の理論限界値となる注1)。