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中国ファーウェイ(Huawei Technologies)は、太陽光発電向けパワーコンディショナー(パワコン)の世界市場でここ数年トップシェアを獲得している。米中貿易摩擦が深刻化する逆風下でも依然として高い競争力を誇る。強さの源泉は何か。同社製品を分解したところ、市場ニーズに合う半導体応用技術を適用していることが判明した。パワー半導体分野の応用研究を進めている名古屋大学 教授の山本真義氏が詳説する。

 中国ファーウェイ(Huawei Technologies)が開発し販売中の太陽光発電(PV)向けパワーコンディショナー(パワコン)を分解・解析して明らかになった新技術について解説する。現在のパワー半導体応用における新しい技術潮流の一端を示唆している。

 特徴は、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)による次世代パワー半導体を採用せず、既存のSi(シリコン)ベースの低耐圧パワー半導体をシンプルに直列接続して、低損失化、低コスト化、大容量キャパシターレス化、制御指令のシンプル化を同時に実現していること。後述するように他社には見られない独自の開発戦略だ。

 しかも低損失化による装置の小型軽量化によって、作業者が1人で設置できるようになる。作業効率が高まり人件費の削減効果もある。製品単体ではなく顧客の総合的なコストを考慮して、こうした開発戦略に踏み切ったことが読み取れる。市場要求を踏まえた応用目線での開発は、企業はもとより、国家プロジェクトの研究においても重要だ。

高効率・低発熱で小型に

 今回取り上げるパワコン「SUN2000L-4.95KTL-JP」は出力4.95kW品である(図1(a))。外形375mm×375mm(厚みは162mm)で重さ12.6kgと同クラスで最も小型軽量の水準ながら、電力変換効率は97%(JIS8961に基づく測定データ)と高い。さらに低コスト化には、従来は未採用の技術を適用しており、この技術は今後の新たな潮流となる可能性を秘めている。以下、パワコンの内部構造を解説し、設計思想を明らかにしていく。

図1 小型軽量で高効率のパワコン
図1 小型軽量で高効率のパワコン
(a)ファーウェイのPV用パワコン「SUN2000L-4.95KTL-JP」 。(b)2つのPVパネルと系統電力(単相3線)の外部端子を備える。(c)筐体の中には昇圧コンバーター部と単相インバーター部がある。(写真:名古屋大学)
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 パワコンの性能を左右するのは、電力変換効率だ。損失で発生する熱は、筐体内部を循環させることで放散される。発熱が大きければ、より大きな空間が必要となり、パワコンの寸法が大きくなってしまう。一方、高効率すなわち低損失なら、発熱量は小さくなってパワコンの容積の拡張は抑えられる。

 特に住宅用パワコンでは、住人の近くに設置するため、自然空冷が求められ、低損失化は大きな付加価値になる。ファーウェイのパワコンの性能で着目すべき点は高い効率だ。高効率化技術について同社のパワコンを分解して確認した。