世界の大手IT企業「GAFA」たちが作り上げた映像符号化方式(動画コーデック)「AV1」が主役に立とうとしている。追いかけるのが、現在国際標準化に向けて規格策定中の「VVC」だ。VVCはAV1を超える符号化性能を誇るものの、符号化の改良に頭打ち感があり、性能上限が見えてきている。さらなる発展には、既存の評価基準を変える必要があると研究者は指摘する。
米Googleや米Appleなどが推す映像符号化方式(動画コーデック)「AV1」。現行規格「H.265/HEVC」を押しのけて主役へと駆け上がるAV1は、特許料を無料にする「ロイヤルティーフリー」の仕組みだけではなく、性能面で優位に立つ点が多い。一方で、H.265の後継規格「VVC」の開発が進む。国際標準化団体「MPEG」と「ITU-T」が共同で立ち上げた「JVET」が、VVCの規格策定を進めている。2014年末ごろから議論を始めていた。
JVETは当初、2020年10月に標準化作業を終了すること目指していた。それを最近になって前倒しして、同年7月に終える計画に変えた。VVCの規格策定に関わる技術者は、「AV1を意識した」と明かす。AV1の普及が本格化する前に、VVCの規格策定を急いで終えたい考えが透ける。関係者の間で期待が集まるのが、大幅な性能向上を狙う技術面に加えて、H.265で生じた特許団体の乱立問題を解決する機運が高まっていることだ注1)。
AV1の性能がH.265に比べて優れるのは、革新的な技術を用いたわけではなく、「動き補償」をはじめ各処理で地道に効率を高めてきたからだ。AV1はH.265に比べて、符号化アルゴリズムの数を増やしている。これはVVCも同様だ(表1)。以降ではAV1とVVCが、H.265とどう違うのか、特徴的な技術を紹介する。