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2019年12月開催の半導体素子技術の国際学会「2019 IEEE International Electron Devices Meeting (2019 IEDM)」では、メモリー、トランジスタ構造、そして3次元集積技術まで、従来路線の継続ではなく、半導体素子技術の大掛かりな再編や刷新につながる発表が目白押しだった。消えかけていた強誘電体メモリー(FeRAM)も新材料の登場で復活し、トランジスタをも大きく変えていく勢いを示した。

 半導体素子技術の国際学会「2019 IEEE International Electron Devices Meeting (2019 IEDM)」では、メモリーからロジック向けトランジスタまで、従来技術を大きく刷新する技術の発表に注目が集まった。近い将来に、エコシステムも含めた半導体素子技術全体の世代交代が始まる可能性が高いといえる。

MRAMが既存メモリーを侵食
L1キャッシュ代替も視野

 2019 IEDMでは従来のSRAM、DRAM、そしてNANDフラッシュ、HDDという従来のメモリー階層を再編する技術の報告が相次いだ。

 その筆頭が、基調講演後のセッション2で次々と大手半導体メーカーが発表した、新メモリーの1つであるSTT-MRAMの1Gビットチップの量産技術である(図1)。

図1 STT-MRAMの300mmウエハーでの製造に大手半導体メーカーがそろい踏み
図1 STT-MRAMの300mmウエハーでの製造に大手半導体メーカーがそろい踏み
STT-MRAMの本格量産に乗り出した、またはその準備が整った半導体メーカーの開発状況。SamsungとEverspinは既に28nm世代の1Gb(ビット)品を量産(a~d)。GlobalFoundries、TSMC、Intelは22nm世代品の量産体制が整ったとする(e)。(写真:(a)はSamsung Electronics、(b)はIEEE、(c)はEverspin Technologies、(d)はIEEE)
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STT-MRAM(Spin Transfer Torque-Magnetoresistive Random Access Memory)=MTJと呼ばれる磁気を用いた記憶素子とトランジスタを組み合わせたメモリー技術。MTJにスピンの向きを揃えた電流を直接流すことでオンオフを切り替える。

 韓国Samsung Electronicsは既に2019年3月に量産を始めた28nm世代FD-SOIプロセスによるSTT-MRAMの1Gビット品の技術的詳細を報告。これまでSTT-MRAMの実用化で孤軍奮闘してきた米Everspin Technologiesも2019年後半に量産した28nm世代の1Gビット品について報告した。従来の製品は256Mビット品だった。このほか、米GlobalFoundries、台湾TSMC、米Intelなどは22nm世代STT-MRAMの量産準備が整いつつあることをアピールした。

FD-SOI(Fully Depleted-Silicon On Insulator)=完全空乏型絶縁層上Si。Siウエハーの表面から10n~30nmの深さに二酸化Siの絶縁層を埋め込んだ基板、またはその基板を用いる半導体プロセス。開発は米IBMだが、同社が半導体製造から手を引く一方で、IBMと技術提携した米Advanced Micro Devices(AMD)やSamsung ElectronicsやIBMの半導体事業を買収したGlobalFoundriesに技術が引き継がれた。ただし、AMDは現在は利用していない。