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「NE主催 パワー・エレクトロニクス・アワード 2019」の贈賞式が2019年12月6日に開催された。パワエレ市場はエネルギーやモビリティーなどの用途が牽引する形で競争が激化している。勝ち抜くには「差異化」が必要だ。そのヒントを得ようと、会場には多くの聴講者が訪れた。本稿では贈賞式と受賞記念講演、サミットの各講演をレポートする。

 日本の大学の理工系研究室とベンチャー企業を対象に、パワーエレクトロニクス(パワエレ)分野の優れた研究を日経エレクトロニクスが応援する「NE主催 パワー・エレクトロニクス・アワード 2019」。その開催を記念するイベント「パワー・エレクトロニクス・サミット 2019」が2019年12月6日に開かれ、昨年を上回る聴講者が集まった(図1)。

図1 「パワー・エレクトロニクス・サミット 2019」の会場と交流会の様子
図1 「パワー・エレクトロニクス・サミット 2019」の会場と交流会の様子
図1 「パワー・エレクトロニクス・サミット 2019」の会場と交流会の様子
図1 「パワー・エレクトロニクス・サミット 2019」の会場と交流会の様子
有望市場であるパワーエレクトロニクスへの高い関心を裏付けるように、多数の研究者や技術者が参加。講演や交流会は大きな盛り上がりを見せた。(撮影:涌井 直志)

 現在、世界の半導体市場は減速の局面にある。世界半導体市場統計(WSTS)は、2019年の世界半導体市場は対前年比で12.9%減に終わると予想している。2桁のマイナス成長は、ITバブル崩壊直後の2001年以来という。こうした不況期にあって、パワー・マネジメント・デバイスやディスクリート(IGBTやパワーMOSFET)といったパワー半導体は、比較的堅調な成長を続けている。もちろん、メモリーICやロジックICと比較すると市場規模はまだまだ小さい。しかし今後は、太陽光発電や風力発電などのエネルギー分野や、電気自動車などのモビリティー分野が牽引役となり、市場規模は急拡大していく見込みだ。世界中の期待を一身に集める有望な市場なのである。

 ただし、有望な市場であればあるほど、多くの人の目に魅力的に映る。世界中の半導体メーカーが、新市場を獲得するために参入してくる。これまで国内メーカーは、パワー半導体市場において比較的高い国際競争力を有していた。特に、IGBTやパワーMOSFETでは、三菱電機や富士電機、東芝デバイス&ストレージなどが売上高ランキンングの上位につけている。

 しかしここ数年、独Infineon Technologiesや伊仏合弁STMicroelectronicsといった欧州勢の躍進が著しい。さらに、中国や台湾の半導体メーカーも短期間で成長を遂げており、今後は「台風の目」となる可能性が高い。こうした厳しい競争環境を、国内メーカーはいかに勝ち抜けばいいのか。その鍵を握るのは、パワエレ分野におけるシステム技術と要素技術だろう。この2つの技術を使ってパワー半導体の性能を最大限に引き出す。そのためには企業や大学などにおける研究開発への不断の取り組みが重要になる。