全7979文字
PR

地上20kmの成層圏を数カ月〜1年間の長期間に渡って無着陸で飛行できる無人飛行体「HAPS(High Altitude Platform Station、またはHigh Altitude Pseudo Satellite)」。NTTドコモやソフトバンクなどの大手移動通信事業者が、基地局として活用する取り組みが本格化している。その背景には第5世代移動通信システム(5G)がある。

 飛行機の上面を太陽電池パネルで覆った無人の電動航空機を「空飛ぶ基地局」として利用する─。フィクションにも思えるこんな計画に大手の移動体通信事業者が本気で取り組もうとしている(図1)。

図1 “産業真空地帯”だった成層圏の活用が始まる
図1 “産業真空地帯”だった成層圏の活用が始まる
地上から20kmの「成層圏」は気流や温度が比較的安定している。その活用のため、各社が太陽電池やガスを使って数カ月~1年の長期間、成層圏を飛行し続ける「HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォームまたはHigh Altitude Pseudo Satellite:高高度疑似衛星)」の開発を進めている。(左の図はHAPSモバイルの図を基に日経エレクトロニクスが作成、右の写真の出典は表記の各社)
[画像のクリックで拡大表示]

 NTTドコモは2020年1月22日に発表した第6世代移動通信システム(6G)に関するホワイトペーパー(技術コンセプト)の中で、高度20km(成層圏)を数カ月〜数年間無着陸で飛行できる飛行体「HAPS(ハップス)」を基地局として利用する構想を公開した。同時期に開催された同社のプライベートショー「DOCOMO Open House 2020」(2020年1月23日〜24日)では、フランスAirbus Defence and Space(エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)のHAPS「Zephyr」の模型を展示し、本格的な活用の検討を進めていることをアピールした。

 NTTドコモ以上に熱を上げているのがソフトバンクである。同社は2017年にHAPS用の機体の開発を手がける米AeroVironment(エアロバイロメント)と合弁でHAPSモバイルを設立。2020年2月21日にはHAPSモバイルが中心となって高高度飛行体(HAPS)を利用した通信ネットワークの提供を目指す業界団体「HAPSアライアンス」を設立した。

 同アライアンスにはソフトバンクやHAPSモバイル、AeroVironmentの他に、米Alphabet(アルファベット)の子会社Loon(ルーン)や、Airbus Defence and Space、通信事業者である中国China Telecom(チャイナテレコム)やドイツDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、通信機器メーカーであるスウェーデンEricsson(エリクソン)やフィンランドNokia(ノキア)など世界のグローバル企業が名を連ねている。