手術を支援するロボットの開発が世界中で活気づいている。現在は内視鏡手術を支援する「da Vinci(ダビンチ)」が独走状態だが、“神の手”と言われるような一部の医師にしかできない手術の一般化を可能にするようなロボットの開発や、国内では打倒ダビンチを目指すロボットの実用化が近づいている。
「この場合どうすれば早く止血できる?」─。若手の執刀医が相談するのはAI(人工知能)を搭載した手術支援ロボットだ。手術支援ロボットがカメラに映った体内の状態を認識し、「この血管の配置であればこのパターンが良さそうです」と応答する。
別の場面では「この角度で器具を動かすと次の操作で出血しやすいです。慎重に作業してください」と執刀医にアラートを出す。今後手術支援ロボットは手技をサポートするだけではなく、執刀医の判断をアシストする役割も果たしていく。
これは手術支援ロボットを利用する医師が考える将来の手術の様子だ(図1)。「人間では手術映像を見たり、論文や文献を読み込む量に限度がある。一方、AIは人間と比べてはるかに大量に学習できる。これまで手術の手技は医師の感覚で表現されてきたが、データが集まれば定量的に示せようになる」とある医師は期待する。現在は既存の手術を支援するロボットの利用が広がっている段階だが、将来は人の手では難しい手術をサポートするロボットや人の判断を手助けするロボットが開発される可能性がある。