米国のリテール(小売り)業界でロボットが浸透しつつある。同業界の世界最大級のイベント「NRF 2020:Retail's Big Show & Expo」(2020年1月12~14日、ニューヨーク)で小売業界に向けたロボットの提案が相次いだ。
中でも多かったのが、店頭の棚に置かれた商品の在庫や配置場所の正誤、値札と商品の整合性などを管理するロボット群だ。米国は日本と比べて小売店の面積が広い場合が多く、人手で調べるには時間がかかる。だが、店頭に在庫がないと、その分商機を逸する。棚の値札と実際の価格が異なると客の不満につながる。こうした課題の解決に向けてロボットを導入する動きが出ている。
棚管理用ロボットを手掛ける企業の中で、米小売り最大手Walmartに導入されたことで脚光を浴びているのが、米Bossa Nova Roboticsである(図1)。移動ロボットに搭載したカメラと距離画像センサで、商品パッケージや陳列の状況、値札などを調べ、その結果をクラウドに送って店頭在庫を管理する1)。ロボット単体を販売するのではなく、ソフトウエアなどをパッケージ化したシステムを提供し、その利用料を得る。
同社の現行ロボットは既に米国内のWalmartで350店舗に導入済み。さらに650店舗、計1000店舗で2020年内に導入する予定だ。次世代機「Bossa Nova 2020」も開発済みで、NRFに出展した。現行機が大型店舗向けだったのに対して、棚と棚の間隔が狭い中・小型の店舗に向け、次世代機では本体をスリム化し、カメラの撮影距離を短くした。
競合企業も実用化で先行するBossa Novaの背中を追う。例えば、米国のEMS(電子機器の受託設計製造)大手Jabilの「Badger Technologies」部門だ。Bossa Novaのようなロボットを利用した在庫管理システムを提供する(図2)。加えて、巡回警備のような役割も担わせる。例えば、床にこぼれた液体を検知して、店舗側に知らせる。