新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。先はまだ見えないが、いずれは終息するだろう。14世紀、ペストによって封建制度が崩壊し、ルネサンスが興った。ではコロナの先に、どんな未来が広がるのか。日経クロステックのIT、先端技術、建設の編集長が今後を展望する。司会は同副編集長の島津 翔。
新型コロナ問題によって、あぶり出された業界の問題点は。

森重 和春 IT編集長
森重和春(IT編集長) IT業界、特に日本の場合は、多重下請け構造だ。下請け企業が常駐型で人材を派遣してユーザー企業の開発ルームに入って作業をする。非常事態宣言が出てすぐに、発注元のIT部門、元請けも在宅になったが、下請けの人は開発ルームで開発をやっていたりする。ITは、プログラムが書ければ、あるいはドキュメントが管理できれば仕事が進む業界なので、技術的には在宅ができるはずだ。開発ルームに行かなくても在宅できる仕組みや制度が求められる。

加藤 雅浩 先端技術編集長
加藤雅浩(先端技術編集長) ものづくりの現場で見えてきたのは、開発に必要な設計・試作・評価がテレワークでは極めて難しいという課題だ。複雑で膨大なデータを扱う半導体や機械の設計にCADは欠かないが、家には満足に動かせるだけの環境がない。試作のための加工機や評価装置もそうだ。
工場に関しては当初、部品の供給がストップして稼働停止に追い込まれた。感染者が出たケースでは、無人化がなされておらず、人が介在する工場も止まった。その後、特に自動車業界がそうだが、需要の急速な減退で工場を止めざるを得ない事態になった。リーマンショック後のように、業界再編が加速する可能性が高いとみている。

浅野 祐一 建設編集長
浅野祐一(建設編集長) 建設では計画、設計、施工、維持管理といった工程がある。各領域で仕事の内容が大きく異なるので、気づきもその領域ごとにある。設計は、リモートでできる部分が割とあると分かってきた。一方、施工の部分はまだまだ難しい。実際にこれだけ騒ぎになって大手は工事現場を止めたけれども、中小はほとんど止めなかった。日雇い形式の技能者は、休業が続けば収入を失う。休業補償も含めて社会システムと同時に変えていかなければいけない。