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夏の暑い日に、主に屋外で使って体を冷やす「暑熱対策製品」の市場が活況を呈してきた。昨年は手持ち式扇風機がブームになったが、今年は「首を冷やすクーラー」の新コンセプトや、ミストを噴霧する携帯型装置も登場。製品の高度化が進むとともに、ソニーなど大手企業が続々と参入し、“戦国時代”を迎えようとしている。

 「昨年の累計出荷台数は1万8000台だったが、2020年は7月時点で20万台を超えた」。新型コロナウイルスの感染拡大でいきなりの“不況"に見舞われる業種が多い中、売れ行きを大きく伸ばしている市場がある。暑熱対策製品だ。

 冒頭のコメントは、首にかけて体を冷やす「ネッククーラー」シリーズを販売するサンコーの広報担当者だ。「もともとは10万台の出荷を予定していたが、増産に次ぐ増産の状態だ」(同氏)という。これは“うれしい悲鳴"の一例に過ぎない。

 暑熱対策品と言えば、2019年には手持ち式扇風機がヒット商品になり、街中で使用する人が多く見られた。今年はより冷却効果が高いさまざまな製品が登場するとともに、これまでベンチャー企業が主流だった市場に、大手企業が続々と参入するという大きな変化が見られる(図1)。

図1 2020年に発売された主な暑熱対策製品の位置づけ
図1 2020年に発売された主な暑熱対策製品の位置づけ
2019年にヒット商品になった携帯型の扇風機を含め、暑熱対策製品のバリエーションは豊富だが、2020年の主役はペルチェ素子を使って首を冷やす製品(青)と電動ファン付きウエア(緑)だ。各製品の使い勝手と冷却面積を、記者の主観評価でマッピングした。冷却効果については、ペルチェ素子を使った製品は電動ファン付きウエアより局所的に冷やせるが、両者の単純な比較はできない。(写真:提供は各社)
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 台風の目は、直流電流を流すと導体の片面が冷える「ペルチェ素子」を応用した「首を冷やすクーラー」(図2)と、衣服にファンを搭載して服内に気流を起こして冷却する「電動ファン付きウエア」(図3)だ。大手では、ソニーと富士通ゼネラルが前者を、アイリスオーヤマとアシックスが後者を発売した。

図2 小型冷蔵庫などで使われるペルチェ素子で人間を冷やす
図2 小型冷蔵庫などで使われるペルチェ素子で人間を冷やす
ペルチェ素子は、直流の電気を流すと素子の片面が冷え、反対面が加熱する性質を持つ。そこで素子の吸熱側を人体に接触させて熱を奪うのが、ペルチェ型冷却デバイスの仕組み。筐体内部にある放熱側では、近接のファンで送風する空冷や、水を循環させる水冷によってペルチェ素子から熱を奪う。写真は空冷方式のソニー「REON POCKET」。(写真:スタジオキャスパー)
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(a)専用ファンとバッテリー
(a)専用ファンとバッテリー
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(b)専用ウエア(背中側)
(b)専用ウエア(背中側)
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図3 ウエア内にファンで気流を作る
一般的な電動ファン付きウエアは、ジャケットの側面から背中側にかけて左右に1つずつ丸い穴が空いている。そこに専用ファンを設置して、外気を服の内側に取り込んで背中から首、両袖の方向に気流を発生させる仕組みだ。ファンは薄型で軽く、静音であることが求められる。ウエアは裾から空気が漏れないように設計する必要がある。写真はアシックスの「AIR CONDITION WEAR」。(写真:スタジオキャスパー)

 夏場に商業施設などで見られるミスト(微小な水粒子)発生器に着想を得たユニークな製品も登場した。ミストを衣服の内部に噴霧し、ファンで風を送って汗と同じ原理で体を冷やす「JUST COOL」である(図4)。ミストは霧のように細かいため、肌や衣服は濡れない。携帯式の加湿器に使われている超音波振動によるミスト発生部品を採用した。

(a)製品外観
(a)製品外観
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(b)アプリ画面
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図4 濡れないミストで体を冷やす
空調服が発売した「JUST COOL」は、超音波でミスト(微小な水粒子)を発生させ、体表面の気化熱を利用して体を冷やす(a)。後ろ側の半透明のタンク(容量100mL)に水を入れ、ウエスト(背部)に取り付ける。上部に2カ所あるミスト発射口から、ファンの風に乗せてミストを放出する。1度の給水で4.3時間使用可能。給電方法は、USB Type-Cまたは、単3電池4本。本体高さは17cm、重さは336g。Bluetoothで接続したスマートフォンの専用アプリで操作する(b)。(写真:(a)はスタジオキャスパー、(b)はアプリ「JUST COOL」の画面をキャプチャー)

 開発したのは、電動ファン付きウエアで約5割というトップシェアを持つ空調服だ。同社によれば、JUST COOLは6月の販売開始から7月6日までに、初回出荷台数の800台を完売した。現在、JUST COOLのミスト噴射機構と、電動ファン付きウエアを一体化した次世代製品の開発を進めているという。