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自社製プロセッサー「Apple Silicon」を発表し、「脱Intel」を示した米Apple。そのApple Siliconの動作デモに使われたのは、2020年3月発売の新型「iPad Pro」のアプリケーションプロセッサー「A12Z Bionic」だった。新型iPad Proに搭載されたA12Z Bionicの実装に迫る。

 Macのマイクロプロセッサーに米Intel製の採用を止め、自社製プロセッサーである「Apple Silicon」を採用する――。2020年6月、米Appleがそんな発表を行った。この発表の際、Apple Siliconに対応する新macOS「Big Sur」の動作デモに使われたのが同社製アプリケーションプロセッサー「A12Z Bionic」だ。Appleは、Apple Silicon対応OSのアプリの開発促進のため、開発者向けに同年6月末からA12Z Bionic搭載の端末のレンタルを開始した。

 このA12Z Bionicを搭載した製品は実は既に市場に存在している。2020年3月発売の新型「iPad Pro」だ(図1)。

図1 ほとんど違いの分からない新旧iPad Proのアプリケーションプロセッサー
図1 ほとんど違いの分からない新旧iPad Proのアプリケーションプロセッサー
「Apple Silicon」製品の開発者向けデモ機に搭載されたアプリケーションプロセッサー「A12Z Bionic」は、2020年版iPad Proの頭脳にもなっている(a)。その形状などは、2018年版のiPad Proの「A12X Bionic」(b)と比べても変わらず、すぐ隣にDRAMを搭載する点も同じである。(写真:(a)は加藤康、日経エレクトロニクス、(b)はスタジオキャスパー)
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 A12Z Bionicとはどんなチップなのか。実装を中心に、新型iPad ProのA12Z Bionicを分析した。

前製品と外見に違いなし

 まず新型のiPad Proに搭載されたA12Z Bionicと、2018年版のiPad Proに搭載された「A12X Bionic」で実装上の違いを調べてみた。A12Z Bionicは、2018年版のA12X Bionicからグラフィック性能を向上させた後継チップと説明されている。

 外観を比べるとA12Z Bionic、A12X Bionicの両方ともパッケージの形は長方形で、すぐ隣には2つのDRAMを実装する。この“心臓部”となるアプリケーションプロセッサーとDRAMの実装位置や形状は、全く同じであった。X線撮影で基板や部品の内部を観察しても同様で、両製品の心臓部に違いは見つからなかった(図2)。そのため、アプリケーションプロセッサーの実装手法は、新旧どちらも同じであると推測できる。そこで新型iPad ProのA12Z Bionic部とDRAM部の基板のみを切断し、チップの断面から構造を調べた。

図2 新旧iPad Proメイン基板内部をX線撮影で比較
図2 新旧iPad Proメイン基板内部をX線撮影で比較
メイン基板全体をX線撮影して内部を観察した。X線撮影による写真で比較しても、2020年版iPad Proの「A12Z Bionic」(a)と、2018年版iPad Proの「A12X Bionic」(b)の間には、違いは見つからなかった。(写真:日経エレクトロニクス)
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