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 電動の垂直離着陸(eVTOL)機の領域で、米空軍が立ち上げたプロジェクト「Agility Prime」に注目が集まっている。2020年4月27日~5月1日にオンラインの発足イベントを開催。同年8月時点で航空機業界のメーカー15社以上がAgility Primeとの提携を申請しており、その多くと既に契約済みだという。

 Agility Primeでは、「ORB」と呼ぶ中・大型のeVTOL機の開発・実用化を促すことを目的にする。人が搭乗できる機体や、100kg超の重い荷物を運搬できる大型の物流ドローンが対象だ。背景にあるのは、小型ドローンの分野で中国企業が市場を席巻していることに対する危機感である。Agility Primeの主要メンバーで、調達や兵站、技術を担当する米空軍のWill Roper氏は、小型ドローンのサプライチェーンを中国が支配する状況を安全保障上の課題と指摘。軍が支援して大型eVTOL機の実用化を加速させるべきだとした1)

安全基準策定を促し23年に実用へ

 この目的を達成するために、Agility Primeではいまだ確立されていない、大型eVTOL機の安全性に関する認証基準の策定に向けた活動に重きを置く。そのため、航空機の各種認証を担う米連邦航空局(FAA)と密に連携する。Agility Primeを通じて、米空軍は実際の運用に耐え得る機体を早期に獲得したい考え。2023年までの商用化や、軍事任務における初期運用の開始を目指している。同年に実用化というスケジュールは、eVTOL機による移動サービスを狙う企業の目標と合致する。

 2020年4月の発足イベントでは、Agility Primeの概要や目的を紹介すると共に、大型eVTOL機の研究開発に取り組む新興企業の講演やバーチャル展示が実施された。開催時期がコロナ禍の真っただ中ということもあって、物流向け大型eVTOL機を手掛ける新興企業のアピールが目立った。例えば米Sabrewing Aircraft Company社や米Elroy Air社である(図1)。

(a)Sabrewing社の物流ドローン
(a)Sabrewing社の物流ドローン
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(b)Sabrewing社の物流ドローンの目標仕様
(b)Sabrewing社の物流ドローンの目標仕様
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(c)Elroy Air社の物流ドローン
(c)Elroy Air社の物流ドローン
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(d)Elroy Air社の物流ドローンの目標仕様
(d)Elroy Air社の物流ドローンの目標仕様
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図1 米空軍のイベントで大型物流ドローンをアピール
2020年4月下旬から開催された、米空軍が立ち上げたプロジェクト「Agility Prime」のキックオフイベントで、中・大型の物流ドローンを手掛ける米新興企業が開発中の機体をアピールした。例えばSabrewing Aircraft Company社は、開発中であるフルサイズの機体を初披露した(a、b)。Elroy Air社は、カーゴ部分を自動で着脱可能な機体を見せた(c、d)。(画像:(a)はAgility Primeのキックオフイベントの公式動画をキャプチャーしたもの(c)はElroy Air社)。

 人を乗せるeVTOL機の開発も進む。発足イベントに登壇した米LIFT Aircraft社は2020年8月に米テキサス州の軍施設で試作機による有人飛行デモを実施した(図2)。

図2 1人乗りのeVTOL機が軍施設で有人飛行デモ
図2 1人乗りのeVTOL機が軍施設で有人飛行デモ
Agility Primeに参画するLIFT Aircraft社は、2020年8月に米テキサス州の軍施設で、試作eVTOL機による有人飛行デモを実施した。1人乗りで、18個の回転翼を備える。(写真:米空軍)
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