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本稿は、2021年2月2日に開催された日経BP 日経クロステック/日経エレクトロニクス主催のオンライン講座「『見えてきた自律自動運転の実用化』~車載センサーと自動運転システムの基礎から最前線まで~」で、菅沼氏が講演した内容の一部を日経エレクトロニクスが再構成したものです。

自律型自動運転システムではLiDARなどのセンサーの話がよく語られるが、もちろんそれだけでは自動運転は成り立たない。ここでは、自動運転にはそもそも何が必要なのか、そしてそれらの要素技術をどのようにシステムとして構成して使っていくかについて、金沢大学 教授の菅沼直樹氏が解説する(本誌)。

 本稿では自動運転システム、特に高速道路のような限定された場所だけではなく、一般道も含めたさまざまな場所で走れる自動運転システムについて、金沢大学でのこれまでの研究内容を軸に解説する。まずは自動運転システムの社会的メリットを大きく3つ紹介する。

 1つは、交通事故を低減できる可能性である。今、自動車の事故の原因として、運転手の運転ミスの割合が高い。もちろん自動運転システムが十分賢いという前提は付くものの、その技術の導入によって運転ミスを減らせる可能性があるわけだ。

 2つめは、そもそも運転に不慣れな人、あるいはそもそも運転ができない人にとっては、自動運転システムによって移動が便利になる点である。

 3つめが、将来自動運転システムが多くの場所で大量に走り回るような社会が実現した場合、街づくり自体が一変する可能性すらあり得る点である。

 例えば自動運転のクルマにとって走りやすい街はどのような街か、あるいは、自動運転とセットにした街づくりとは何かを考える。例えば都心部では、商業施設に着いても駐車場の確保が難しいということが少なくないが、自動運転システムを前提にすると、商業施設に着いたときに乗員はそのまま降りるだけでいい。駐車場にクルマを停める必要すらないということになる本誌注1)。そうすると街の空間の利用の仕方自体も変わってくる可能性があることが、容易に想像できる。こういったいろいろな期待や利点が数多く考えられるのが、自動運転システムだといえる。

本誌注1)この場合、そのクルマはどうなるかというと、(a)商業施設からやや離れた駐車場に自ら駐車しにいき、利用者が食事や買い物を終えた時間に合わせて戻ってくる「オートバレーパーキング」、(b)あるいは空いた時間、クルマを自動運転タクシーやカーシェアリングサービスなどに転用して、クルマに稼がせる、といった構想が語られている。