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 大阪工業大学・大森英樹氏の研究グループ 
85kHz帯3kWの無線給電を
1個の新型SiC MOSFETで駆動

開発したシングルエンデッド方式の高周波インバーター。周波数は85kHzで、出力は3kWである。(図:大森氏)
開発したシングルエンデッド方式の高周波インバーター。周波数は85kHzで、出力は3kWである。(図:大森氏)
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 スマートフォンなどで既に実用化が始まっているワイヤレス(無線)給電。しかし電気自動車(EV)の充電用途では、試作例は数多くあるものの実用化には至っていない。EVへの給電をワイヤレス化すれば、駐車場の指定位置に停車しただけで自動的に充電したり、感電などの危険性を排除したりすることが可能になるなど、数多くのメリットが得られる。それにもかかわらず、いまだに実用化されていない。大阪工業大学 工学部 電気電子システム工学科 教授の大森英樹氏は、その理由の1つとして「コストが高い点」を挙げる。

 そこで同氏の研究グループは、ワイヤレスEV充電の低コスト化に取り組む。着目したのは高周波インバーターだ。磁界共振方式を採用したワイヤレス給電では、50/60Hzの商用周波数をインバーターで高周波化し、送電コイルで磁界を発生させて、受電コイルで電力を取り出す。通常、高周波インバーターは、4つのスイッチ素子で構成するフルブリッジ方式を使う。出力の制御性が高いからだ。しかし、スイッチ素子を4個使うため部品コストが高いというデメリットがある。そこで同氏は、フルブリッジ方式では低コスト化は難しいと判断し、スイッチ素子を1個しか使わないシングルエンデッド方式を選択した(図1)。

図1 高周波インバーターの回路方式の比較
図1 高周波インバーターの回路方式の比較
1つのスイッチ素子で構成するシングルエンデッド方式を採用することで、スイッチ素子を4つ使うフルブリッジ方式と比べて小型化や軽量化、低コスト化を図れる。(図:大森氏)
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 シングルエンデッド方式はすでに、IH調理器などで実用化されている。しかし用途は低出力向けに限定されていた。同方式は、インダクターとキャパシターによる共振現象を使ったゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作を採用しており、瞬時電圧が高い共振波形がスイッチ素子に直接印加される。高出力化、高周波化には、高耐圧のスイッチ素子が必要なため、「従来のシングルエンデッド方式は25kHz、1kWが限界だった」(同氏)。