全7642文字
PR

実用化を阻む課題を解決

 実際にATACを使って共振周波数をずらす4つの要因を補償できるかどうかを検証した。図3は、受電器の共振コンデンサーの静電容量を±10%変化させた際の受電電力の変動の様子である。ATACを使わない従来システムでは、容量が変化すると受電電力が大きく減る。しかしATACを使う提案システムは、容量が変化しても受電電力は最大電力に近い値でほぼ一定となった。つまり、第1の要因である共振コンデンサーの容量変化による共振周波数のずれを補償できることを実証したことになる。

図3 共振コンデンサーの容量ばらつきを補償
図3 共振コンデンサーの容量ばらつきを補償
受電器の共振コンデンサーの容量を±10%変化させた。ATACを使わない従来システムは、容量が変化すると受電電力が減少した。しかしATACを使う提案システムは、容量が変化しても受電電力の変動はほとんどなく最大に近い値を維持できた。(図:平木氏)
[画像のクリックで拡大表示]

 このほか第2、第3、第4の要因についても、すでに別の実験で補償できることを確認済みである。平木氏は、「ATACを使えば、これまでの課題を解決できる。磁気共鳴方式を採用したモバイル機器向けワイヤレス給電システムの実用化に向けた道筋を示せた」という。

 この研究成果には課題が1つ残っている。ATAC制御回路の基準信号を、送電器で検出して受電器に無線送信していることだ。ただし、この課題の解決方法はすでに考案済みだ。それは受電器に流れる電流の周波数情報を検出し、これをATAC制御回路の基準信号に使う方法である。すでに問題なく動作することを実験で確認している。

参考文献
1)Ishihara M., Fujiki K., Umetani K., Hiraki E., "Autonomous System Concept of Multiple-Receiver Inductive Coupling Wireless Power Transfer for Output Power Stabilization Against Cross-Interference Among Receivers and Resonance Frequency Tolerance," IEEE Transaction on Industry Application, pp.3898-3910, May 2021.