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これまで短命だったLi-S2次電池の寿命が飛躍的に延び、1000サイクルを超える開発例が相次いでいる。技術の進展に応じて、事業化に向けた動きも活発で、航空機大手の米Boeingのみならず複数のEVメーカーが次々と電池メーカーの青田買いを始めた。サイクル寿命の伸長により、EV用途でも有力視されてきた。全固体版では、500Wh/kg超えを実現可能な正極が開発された。

 高い重量エネルギー密度と低コストが両立するリチウム硫黄(Li-S)2次電池の開発が勢いを増している。正極材料の硫黄(S)が多硫化リチウム(Li2Sx)の形で電解液に溶出してしまう課題がほぼ克服されてきたからだ。中には充放電サイクル寿命が1400回に到達するセルも出てきた(図1)。重量エネルギー密度は電解液ベースでは最高で500Wh/kg程度。全固体でも同400~500Wh/kg到達が視野に入る。酸化物系固体電解質を使って安全性を高める研究も出てきた。Li-S2次電池の製品化が現実味を帯び始め、各メーカーには大口顧客が付きだした(図2)。

図1 高いポテンシャルを持ち、従来の課題も克服が見えた
図1 高いポテンシャルを持ち、従来の課題も克服が見えた
既存のLiイオン2次電池(LIB)との比較から見たLi-S2次電池のポテンシャルの高さや課題(a)と、その課題解決に向けた技術(b)。Li-S2次電池は重量エネルギー密度と低コスト化の点でLIBを大きく上回る潜在力がある。一方、正極活物質のLi2SxがLIBで一般的に使われるカーボネート系電解液に溶出しやすいことが開発のネックだ。最近になって、溶出抑制の技術が多数開発されてきた。ただし、それぞれの溶出抑制技術にはサイクル特性やエネルギー密度に課題を抱えている。固体電解質の技術進展も著しく、性能が大きく向上してきた(c)。(図:日経クロステック)
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図2 Li-S電池メーカーに大口顧客が付き出した
図2 Li-S電池メーカーに大口顧客が付き出した
Li-S2次電池をめぐる最近の主な契約の動きを示した。主な開発メーカーであるLi-S Energy、Lytenはいずれもユーザー企業との提携を活発に進めている。GSユアサが参加しているNEDOのプロジェクトでは、Boeingが研究協力している。この他、LG Energy SolutionもLi-S2次電池の開発を公表している。(写真:各社)
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