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完全空冷で放熱

 この三相インバーターは中国・陽光電動力製で、寸法が220mm×210mm×97mm、体積が4.5L、重量が4.3kgである(図4表1)。一般的なEV用インバーターの重量8k〜10kgと比べて非常に軽い。駆動電圧は96Vで、定格出力は20kWである。筐体(きょうたい)の材質はアルミだ。ちなみに宏光MINI EVは車載電池として中国・寧徳時代新能源科技(CATL)製のリチウムイオン電池(LIB)を搭載している(図5)。

図4 車載インバーターとしては小型サイズ
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図4 車載インバーターとしては小型サイズ
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図4 車載インバーターとしては小型サイズ
宏光MINI EVのインバーターの外観。寸法は220mm×210mm×97mmである。車載インバーターとしては小型だ。(写真:山本真義)
表1 インバーターの各種性能
名古屋大学の調査と、筐体上のラベルの記載内容を基に作製した。(表:山本真義)
表1 インバーターの各種性能
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図5 車体後方にインバーターを設置
図5 車体後方にインバーターを設置
宏光MINI EVのパワートレーンを車体の下から見た写真。バッテリーの後方に設置されたインバーターは、電池から来た直流電力を三相交流電力に変換し、後輪駆動用モーターに出力する。(写真:アイシン)
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 まずは、本インバーターの特徴の1つであるコスト抑制のための独創的な設計について述べる。このインバーターは大きく上部ケースと下部ケースから構成される。上部ケースには主に制御系基板や各配線のバスバー配線部があり、下部ケースには主にパワー回路部と冷却機構がある。

 全体を見たときに特徴的なのが、車載インバーターとしては珍しい完全空冷方式を適用している点だ(図6)。水冷でなく空冷を選んだのは、部品コスト削減や省スペース化のためとみられる。発熱源であるパワー半導体を載せたアルミベース基板に、自然空冷用のアルミフィンを直付けして、放熱する仕組みだ。一見シンプルな構造だが、放熱効率向上の工夫が施されている。

図6 MOSの放熱を完全空冷で実現
図6 MOSの放熱を完全空冷で実現
インバーターの放熱の仕組みを示した。自然空冷用のアルミフィンをアルミベース基板に直付けし、発熱源のパワー半導体を空冷する。車両の進行方向と平行に設置して、外気と当たりやすくしたり、インバーター前方に設置されたLIBから空気の流路を用意したりしている。(図と写真:山本真義)
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 その工夫とは、例えばアルミ冷却フィンを車両の進行方向と平行に設置して、外気と当たりやすくしている点や、インバーター前方に設置されたLIBから空気の流路を用意している点などだ。こうした随所の工夫によって、完全空冷方式で熱交換することが可能になったとみられる。