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徹底された耐振機構

 続いて、上部ケースの内部を見ていこう(図14)。このパーツは主に制御系基板とAC用電流センサー、防振シートを搭載する。制御系基板の下には、黒い樹脂ケースで封止されたバスバーAssy(各部品を接合する銅配線)があり、湿気硬化型のシール接着剤で筐体と接合されている。

図14 上部ケースには制御用基板が載る
図14 上部ケースには制御用基板が載る
インバーターの筐体を開いて、上部ケースの内側を眺めたところ。制御系基板や、下部ケースのアルミ電解コンデンサー用防振シート、電流センサーなどがみつかった。(写真:山本真義)
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 制御系基板には、表面にモーター駆動制御用CPU(中央処理装置、Central Processing Unit)、CAN(Controller Area Network)ドライバー、PWM(パルス幅変調、Pulse Width Modulation)指令値をケース下部の1層目基板に送るコネクターなどがある。裏面には低圧コネクターや電流センサー用のコアなどがある(図15)。冷却用のサーマルビア・パターンが裏面に複数あったが、実際にはどこにも熱的接続されていなかった。設計時には何らかのサーマルビアとして機能させる予定であったようだが、機能簡略化などで使用されなかったものと考えられる。

(a)表面にはTI製マイコンを設置
(a)表面にはTI製マイコンを設置
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(b) 裏面には電流センサーを設置
(b) 裏面には電流センサーを設置
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図15 基幹部品のCPUやCANドライバーは高信頼の製品を使用
制御系基板の表面と裏面。CPUにはTexas Instruments製32ビットマイコン、CANドライバーにはNXP Semiconductorsの製品を使うなど、基幹部品の信頼性が高い。裏面には冷却用のサーマルビア・パターンが複数あったが、それらはどこにも熱的接続されていなかった。(写真:山本真義)

 三相インバーターのモーター駆動電流を検出する電流センサーは、基板を貫通する三相出力端子と接するように、2つ設置されている。形状はホール型で、ホールコアも円形だ。

 部品の接合部の処理も非常に丁寧だ。低圧コネクターと制御系基板は、非常にきれいなはんだ処理がされている。制御系基板右側の電流センサーの設置部も、透明な樹脂がとても丁寧に塗布され、センサー接合部の防湿処理をしていた。

 上部ケースに設置された防振シートは、厚さ6mmの樹脂シートで、下部ケース部のアルミ電解コンデンサーの上面と接して、上下方向の振動を吸収する役割を担っている。前述のように下部ケースにも耐振用樹脂カラーを取り付けており、上下方向の揺れへの耐性は極めて強いと推測できる。