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 日本国内で、5G(第5世代移動通信システム)のキラーサービスといわれる「ネットワークスライシング」の商用化が始まった。KDDIが2022年2月末、法人を対象にいち早くネットワークスライシングの商用展開を開始した。ネットワークスライシングは、1つの物理的なネットワークを用途に応じて仮想的に分割する。安定的な映像配信やロボットの制御などへの応用が期待されている。

 「ネットワークスライシングを使ったゲームのほうがスムーズに動きます」─。

 KDDIとソニーは22年3月下旬、ネットワークスライシングを活用し、家に設置したゲーム機から外出先にゲーム映像を配信することで、スムーズにゲームを楽しめるという技術実証を実施した(図1)。

図1 KDDIとソニーが共同で実施したネットワークスライシングを活用したゲームストリーミングの実証
図1 KDDIとソニーが共同で実施したネットワークスライシングを活用したゲームストリーミングの実証
左側がゲーム専用スライスに接続したスマホ、右側が通常のスライスに接続したスマホである。ゲーム専用スライスに接続したスマホのほうが、スムーズにゲームを楽しめていた(撮影:日経クロステック)
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 KDDIが法人向けに商用展開したばかりのネットワークスライシングを使い、ゲームストリーミング専用のスライスを用意。必要なリソースをあらかじめ割り当てることで、ネットワークが混雑した場合でも安定的にゲームを楽しめる様子を見せた。

 ソニーは、外出先のデバイス(スマホなど)から自宅に設置したゲーム機にアクセスしてゲームを楽しめる「PSリモートプレイ」という機能を提供している。ただ現状では「利用者宅内の環境が人によってまるで違う」(ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部第1ビジネス部統括部長の木山陽介氏)という点が課題になっていた。

 この課題を解決する手段としてソニーが期待するのがネットワークスライシングだ。ゲーム専用スライスに接続することで、利用者の環境の違いを吸収。新たなサービスにつなげられる可能性がある。