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 展示会「通信・放送Week 2022」(2022年6月29日~7月1日、東京ビッグサイト)では、第5世代移動通信システム(5G)に向けたアンテナ技術や中継技術、あるいは電波に対する超低損失材料などが多数出展された。5Gの電波の多くは直進性が高く、回り込みが少ないため、アンテナ数をこれまでより大幅に増やす必要があるほか、基地局から見通しがきかない場所へは電波を反射して届かせる反射板や、電波をいったん受けて障害物をう回して再度放射する中継装置(リピーター)なども必要になってくる。展示会では、5G向けに新たに開発した技術だけでなく、各メーカーが別の用途に使っていた既存の技術や部材を、5G向けに転用する例も目立った。

メガネのレンズもアンテナになる

 大日本印刷(DNP)が5G用に開発したアンテナの1つが、透明なアンテナだ(図1)。微細な銅(Cu)配線を透明な樹脂フィルム上に形成してアンテナや配線にした。5G用の透明アンテナは、ガラスメーカーなどが開発や製品化で先行しているが、光透過率が低く、意外に目立ってしまうのが現状だ。

図1 DNPが開発した透明アンテナ
図1 DNPが開発した透明アンテナ
光透過率は86%以上で、注意して見ないとアンテナがあるとは分からない。このアンテナは非接触ICカード向けの13.56MHzの周波数を想定した実装になっている(写真:日経クロステック)
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 一方、DNPの透明アンテナは、光透過率が86%以上と非常に高く、そこにアンテナや配線があること自体、なかなか分からない。シート抵抗値は明らかにしていないが、「ITO(In-Sn-O)の透明電極よりはずっと低い」(DNP)という。

 DNPが想定するこのアンテナの設置場所は光を通す必要があり、これまではアンテナなどに使えなかった場所だ。具体的には、(1)スマートフォンの画面全体、(2)クルマのフロントガラス、(3)メガネのレンズ部分、(4)窓ガラス、などである。AR(Augmented Reality)グラスなどにも利用可能とみられる。

壁や家具、電柱もアンテナに

 DNPは、透明化とは異なる発想の“見えない”アンテナも開発した(図2)。壁紙や家具などと区別がつかないフレキシブルなフィルム型アンテナである。厚みは約2mmほど。丸い円柱に巻き付けられるという。

図2 家具や電柱に溶け込むアンテナ
図2 家具や電柱に溶け込むアンテナ
透明にするのではなく、柔軟な形状にすることやカバーデザインを選ぶことで周囲の背景と“同化”してアンテナを目立たなくした例(a、b)。カバーデザインの選択肢は非常に多い(c)(写真:日経クロステック)
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 最大の特徴は外側のカバーで、木目調や白壁風、塩ビ風など設置する場所に合わせてさまざまなデザインを選べる点。室内の壁、家具や家電に、アンテナだと気が付かせずに設置できそうだ。