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パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)が技術開発体制の強化を進めている。インフラやエネルギーなど長期戦の分野に耐えられる体制を構築するとともに、ソフトウエアなど短期戦の分野は社外の力を積極的に活用する。グループ最高技術責任者(グループCTO)として技術戦略を統括する小川立夫氏に方針を聞いた。(聞き手は高野 敦=日経クロステック/NIKKEI Tech Foresight)

グループCTOとしてのミッションを教えてください。

 大きく4つあります。第1に、技術を軸にグループ全体の将来像を示すことです。我々の競争力は技術にあると思っていますので、経営の理念や考え方を全体にしっかり伝えていきます。第2に、その技術自体を持ち株会社の技術部門としてしっかり開発すること。第3に、そうした技術開発を進めるうえで、マネジメントをやっていくこと。事業会社にもそれぞれCTOがいますので、必要に応じて技術ポートフォリオ管理や人材育成を一緒に考えます。第4に、研究開発やものづくりの現場を強くすることです。

 今、デザイン経営実践プロジェクトを社長の楠見(雄規氏、パナソニックHDグループ最高経営責任者)の下で進めていまして、もっと先の将来からバックキャストしようとしています。10年以上先の世界を見通すことで、いったん視座を上げるのです。そうすると、今はここしかやっていないけど、将来はここをやらなければいけないのではないか、ということが見えてきます。

 次に、そのために必要な技術を考えていきます。そのとき、事業会社が持っている技術を深めるだけでは不十分な場合があります。将来を考えると必要だけど、今の事業会社の枠組みでは手を出しにくい技術です。そういう技術は、持ち株会社でカバーしていきます。ですから、特に持ち株会社の技術部門は「10年の計」ぐらいの意識で技術に向き合うことになります。そうした長期のビジョンを持ったうえで、これから3年は何をするかということを考えていくわけです。

2021年にCTOに就任されたときの記者会見で、「パナソニックは3~5年スパンの開発は得意だけど、10年単位の腰を据えた開発や、逆に1~2年程度のスピードが求められる開発は不得意なのかもしれない」という旨の発言があったかと思います。持ち株会社の技術部門としては、そうした部分を強化していこうということでしょうか。

 そうです。そもそも組織能力が足りていない、マネジメントのあり方として我慢ができていない、必要なときに資金や人材を投入できていない、といった問題意識があります。特に10年単位の長い開発については、重点分野であるインフラやエネルギーがまさにそうですので、花火だけ打ち上げて3年ぐらいでギブアップということにならないよう、着実に仕込みを進めます。

 一方、短いスパンの開発については、社内で育てることにこだわらず、積極的に外に切り出していこうと思っています。特にソフトウエアは、社外のパートナーと一緒にやることに大きなメリットがあります。

研究開発費の絶対額や、持ち株会社と事業会社の配分などは、どう考えていますか。

 まず、絶対額は単純に増やせばよいというものではないと思っています。やはりバックキャストでいつごろまでにどんな準備をする必要があるのかというシナリオを明確にしたうえで、適切な額を手当てしていきます。

 絶対額や配分の大まかなイメージはありますが、事業やテーマによってはその枠を超えて資金を投入しなければいけない局面もあるでしょう。その場合は、楠見とも相談しながら持ち株会社のハンドリングの下で特定の事業やテーマに関する研究開発費を増やすことを考えます。

 持ち株会社の技術部門としては、事業会社が稼いできたお金で研究開発をしている側面がありますので、事業会社が将来必要になる技術を自分たちが前もって仕込んでおくんだという意識を持っていることが大事です。

(写真:今 紀之)
(写真:今 紀之)
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