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 深紫外線、より具体的にはUV-Cと呼ばれる波長が100n~280nmの電磁波を出力するLED(UV-C LED)の市場が急拡大しつつある。

深紫外線=波長がおよそ300nm以下の紫外線。280nm以下のUV-Cと同一視する場合もあるが、本稿では区別する。

 調査会社の英Allied Market Researchの予測によれば、世界のUV-C LEDの市場規模は2020年の約2億米ドル(1米ドル=140円で約280億円)の規模から、2030年には約100倍の189.4億米ドル(同約2.65兆円)と猛烈な勢いで急成長する見通しだ注1)。2021~2030年の年平均成長率(CAGR)は59.7%。多くの成長事業の中でも飛び抜けて高い。

注1)米国の調査会社Report Oceanによれば、2021年の世界のLED市場は795億米ドルで、2030年には1915億米ドルに拡大するという。Report OceanもUV-C市場は急成長すると予測している。UV-C市場はLED市場全体の約1割弱を占める可能性があるわけだ。

 そのきっかけはやはり、新型コロナウイルス感染症のまん延だ。UV-C LEDの利用目的は、カビや細菌の除菌、ウイルスの不活化などの衛生環境の維持がほとんど。以前は水の除菌が主な想定用途だったが、最近は部屋やビル内の空気、エスカレーターの手すり、そしてさまざまな持ち物を除菌するUV-C装置が急増した(図1)。

図1  UV-C LEDでポータブル化、パーソナル化が進む除菌装置
図1  UV-C LEDでポータブル化、パーソナル化が進む除菌装置
UV-C(波長280nm以下の紫外線)を発光するLED(UV-C LED)を用いた除菌、防カビ、ウイルスの不活化などを目的とした装置群。カッコ内は発光波長。同じUV-Cを発光するランプを用いた装置より小型で、持ち運べるものが多い。スタンレー電気と豊田合成はそれぞれ内製したUV-C LEDを用いた空気除菌装置を発売済み(a、b)。韓国Ideacityとその親会社の同YANMA GNSは2014年にエスカレーターの手すり専用のUV-C除菌装置を開発し、日本を含む世界51カ国に出荷済み。日本では福岡市の福岡国際会議場などで利用している(d)。2021年にはペン型のUV除菌灯も発売した。米Sapience Groupは水筒のフタの内側にUV-C LEDを組み込み、衛生状態を信頼できない水道水や池の水などを除菌して飲めるようにした水筒を発売(e)。90~180秒で殺菌が完了するという(写真:(a)と(d)の左は日経クロステック、それ以外は各社)
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