「これまではスマートスピーカーや家電、住設機器などを手掛けるメーカー各社が独自のプロトコルで囲い込みをしようとした結果、スマートホーム市場が分断されて思うように成長しなかった。そこで、プロトコルを共通化しようと世界のさまざまな企業が手を組んだ点で大きなインパクトを持つ」(三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部IoT・ライフソリューション新事業推進センター センター長の朝日宣雄氏)
2022年10月4日(現地時間)、米Connectivity Standards Alliance(CSA)は、スマートホームの新しい通信規格「Matter(マター)」の仕様1.0版を公開した。同時に認証プログラムも開始した。CSAの前身は近距離無線通信規格「Zigbee」の規格策定と普及活動を行ってきた「Zigbee Alliance」である。仕様の公開によって製品開発は本格的なスタートを切り、2023年末ごろには数多くの対応製品が登場するとみられている(図1)。
Matterは、冒頭のコメントにあるように、これまで多数の規格が乱立していたスマートホームの“戦国時代”に終止符を打つ「最終統一規格」になると期待されている。Matterがこのように評価されているのは、米国のAmazon.com(アマゾン・ドット・コム)、Google(グーグル)、Apple(アップル)の3社が、デバイスの相互接続性に関しては協調戦略に転換したことによって誕生した規格であるためだ。各社とも、これまでは独自プロトコルをベースにしたプラットフォームで囲い込み戦略を推進していた。
さらに、家電や半導体など世界のそうそうたる企業がMatterへの対応を表明していることも大きい。
CSAへの参加企業は2022年11月28日時点で542社。会員の階層は、仕様策定をリードするボードメンバーである「Promoter(プロモーター)」、仕様策定に関わりワーキンググループへの参加権を持つ「Participant(パーティシパント)」、策定された仕様を基に製品を開発できる「Adopter(アダプター)」の3種類があるが、会員数はそれぞれ29社、272社、241社となっている。
プロモーターにはアマゾン、グーグル、アップルのほかに、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)、韓国LG Electronics(LG電子)、中国Haier(ハイアール)、中国Huawei Technologies(ファーウェイ)、スウェーデンIKEA(イケア)、照明大手のオランダSignify(シグニファイ)、電気機器・産業機器大手のフランスSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)、さらに米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)やドイツInfineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)といった大手半導体メーカーなどが参加している(表1)。
Promoterの例 | Amazon.com、Apple、Google、 Samsung Electronics、LG Electronics、Haier、Huawei、Signify、IKEA、Schneider Electric、Infineon Technologies、Texas Instrumentsなど29社 |
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Participantの例 | Arm、Dyson、Hisense、HP、Intel、iRobot、Meta、MediaTek、Qualcomm、Bosch、Siemens、Tesla、Xiaomi、三菱電機、村田製作所、パナソニック、東芝、mui labなど272社 |
Adopterの例 | Cisco Systems、Acer、沖電気工業など241社 |
パーティシパントには英Dyson(ダイソン)や米Intel(インテル)、米Meta Platforms(メタ・プラットフォームズ)のほか、米iRobot(アイロボット)、米Tesla(テスラ)も名を連ねる。これだけ幅広い業界からビッグネームが参加するスマートホーム規格はかつてなかった。
ちなみにCSAへの参加は有償で、プロモーターは年間10万5000米ドル(約1450万円、1米ドル=138円換算)、パーティシパントは年間2万米ドル(276万円)、アダプターは年間7000米ドル(97万円)の費用がかかる。