最近になって、中国や北欧で電気自動車(EV)の普及に弾みがつき、世界の市場規模は年間1000万台の大台に乗りつつある。一方で、EVが急増したことで、休日の行楽地などでの充電渋滞が顕在化し、EVの充電インフラの課題があらためてクローズアップされる事態にもなっている。
そこで、その課題を大きく解決する可能性のある、道路に敷設したワイヤレス電力伝送(WPT)システムで走行中のEVに給電する「走行中給電」に再び脚光が当たり始めた。加えて、システム開発の担い手も、これまでの大学など研究機関から、実際に社会インフラを担う建設会社大手へと移り始めた。具体的には、大成建設や大林組だ。両社はそれぞれ異なる方式の走行中給電技術やシステムで、道路への社会実装実現に向けて研究所構内での実証実験を始めている。
共鳴で伝送可能距離が大きく伸びた
WPTには大きく(1)電界共鳴結合、(2)磁界共鳴結合─の2方式がある(図1)。(1)はコンデンサーの一種を使う技術で、交流電力の伝送では一般的な技術といえる。ただし、これまでの“無線伝送距離”は非常に短かった。(2)も従来の電磁誘導の延長線上にある技術だ。これも以前は「共鳴(resonance)」があまり意識されていなかった。
2006年に世界で初めてこの共鳴の重要性を提唱したのが、米Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学、MIT)の当時Assistant Professor of Physics(現Professor of Physics)だったMarin Soljacic氏だ注1)。この共鳴が非常に大きくなるように回路パラメーターを選ぶと、無線伝送する距離をそれまでよりずっと長くとれるようになるというものである。