2022年12月14日、半導体装置・材料の展示会「SEMICON Japan 2022」(東京ビッグサイト)。その開幕を記念した「オープニングセッション」は異様な熱気を帯びていた(図1)。メーンステージに用意された数百の観客席はまたたく間に埋まり、立ち見も含めて黒山の人だかりができた。
会場に集まった聴衆の目的は2人の人物の話を聞くことにあった。最先端プロセス半導体の量産を目指す新会社Rapidus(ラピダス、東京・千代田)の取締役会長 東哲郎氏と代表取締役社長 小池淳義氏である。ラピダス設立発表後に初めての公の場での登場となった注1)。
「時、既に遅し」、「最先端特化では利益が出ない」、「用途が曖昧」、「あと5年で最先端工場を作るのは難しい」……。
2022年11月11日にラピダスの設立発表会見が行われて以降、このような否定的な声が少なからず上がっているのは事実だ。しかし、会場に大挙詰めかけた聴衆からは、ラピダスにかつてない期待がかけられていることがうかがえる。
最先端ロジックで世界一目指す
ラピダスに期待が寄せられる最大の理由、それは、日本では終わったとされていた最先端ロジック半導体の開発・量産に再び乗り出し、世界一を目指す方針を掲げたからである(図2)。日本に最先端半導体工場を建設し、2nm世代のロジック半導体を2020年代後半に量産開始する計画である。「ラピダスで今後10年、20年と世界をリードしていけるようにしたい」(東氏)
かつて半導体産業や電子産業、製造業で世界を制した日本だが、以前の強みはすっかり失われつつある。デジタル家電で韓国や中国に敗れ、今後の成長市場でも、電気自動車(EV)では米Tesla(テスラ)や欧州企業に後れを取り、クラウドで米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)に覇権を握られた。世界で続々とイノベーションが生まれているデジタルシフトやデジタルツインでも「日本は世界に立ち遅れており、このままでは、日本は自然とおいしい食事が楽しめる観光メインの国になってしまう」(近畿大学 情報学部長 アセントロボティクス CEO代表取締役の久夛良木健氏)可能性すらある。