日本政府の半導体復権への肩入れは半端ない。例えば、半導体装置・材料の展示会「SEMICONJapan 2022」(東京ビッグサイトで2022年12月14~16日に開催)のオープニングセレモニーに内閣総理大臣の岸田文雄氏が登壇して聴衆を驚かせた*1)(図1)。同展示会のディナーレセプション(招待制)には経済産業大臣の西村康稔氏が登壇した(図2)。
『半導体展示会SEMICON Japanに岸田総理がリアル登壇、同盟国で力合わせ2nm生産へ』
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日本の半導体復権に大きな役割を担うと期待されているのが、新会社Rapidus(ラピダス、東京・千代田)である。同社は米IBMから2nm世代の半導体製造技術を取り入れ*2)、その技術の核となるEUV(極端紫外線)露光装置でベルギーのimecと組むことになった*3)。同社の動向は日経クロステックをはじめ、さまざまなメディアで報道されている。これまでの報道では製造に焦点を合わせている場合がほとんどである。すなわち、2nm世代という最先端プロセスで半導体のトランジスタを造れるかどうかという議論だった。一方、この記事では、製造の先に立ちはだかる設計という視点でラピダスの限界と可能性を考える。
『ラピダスとIBMが戦略的協業、まずはGAA学びに米国へ』
https://nkbp.jp/3I6Wj6z
ラピダスとimecが協業、EUVを使った半導体製造の共同研究
https://nkbp.jp/3xpvcPd
かつてはトランジスタを造れれば、そのトランジスタを前提にして設計を進めることで、トランジスタを多数集積したロジックIC(Integrated Circuit:マイクロプロセッサーやスマートフォン向けSoC(System on a Chip)が代表例)が開発できた。しかし、7nm世代辺りから、こうした単純な構図では競争力のある先端ロジックICの開発が難しくなってきた。設計と製造が協調して開発を進めるDTCO(Design Technology Co-Optimization)と呼ばれる手法を採ることが必須となっている。後述するようにDTCOはラピダスには荷が重く、台湾TSMC(台湾積体電路製造)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)といったファウンドリー企業と2nm世代プロセスの量産で競合することは難しい、あるいはそもそもそこで戦う意図はないと筆者は考えている。
一方で日本の半導体復権にラピダスが役立たないかというと、そうでもない。現在、国内半導体メーカーが量産できる半導体は40nm世代にとどまる。40nm世代から2nm世代へと一足飛びに進むことで、日本の半導体復権に向けての道が開ける可能性がある。以下、IBMやimecなどと手を組むことでラピダスは2nm世代の製造技術を確立できると仮定し、設計の視点で議論を進める。