米Appleが毎年発行する200社のサプライヤーリストに載ること。それは民生機器向け部材を手掛けるメーカーにとって、「メジャーリーグ」入りを意味する。7年分のリストに載った全中国企業を挙げ、さらに統計からAppleの調達方針を示す。サプライヤーの拠点分布は、米国への製造回帰を進めたい米政権の思惑とは裏腹な状態にある。
かつての勢いが完全消失し、既存ファンに向けた商品サービスづくりに没頭する米Apple。そうであっても同社は2018年9月29日までの1年間に、774億米ドルも営業キャッシュフロー†を生み出した。それを下支えしたのがCEO Tim Cook氏の出身部門Operationだ。部材調達や生産管理を担う。その仕事の一端を示す「Supplier List」の2018年版を見た日系機器メーカーの元技術者はつぶやいた。「さすが、中国企業を大分取り込んだ」。
†営業キャッシュフロー=投資や財務活動を除いた現金収支。発生主義を採る損益計算書では、請求書を顧客に提出した瞬間、請求額を売上高に加算する。本当に入金されるか否かは関係ない。一方、現金主義を採るキャッシュフロー計算書では、着金をもって営業キャッシュフローに加算する。
Appleは日本企業一般よりもサプライヤーの絞り込みと中華圏企業の開拓に対して積極果敢だ注1)。主に台湾サプライヤーの従業員を引き抜き、Operation部門のGSM(Global Supply Manager)職に就かせてきた。母語の中国語と技術知見を生かして主に中国サプライヤーを発掘してもらうため、そしてサプライヤー間競争を促進するためだ。その結果2019年に発行された2018年版リストでは中国大陸系(中国+香港)系サプライヤー数の方が日系より多くなった(図1)。2012年に12社だった中国サプライヤー数は32社に激増した。
注1)Appleは集中購買と管理工数の抑制に向けて2012年以前からサプライヤー数を原則200社に限ってきた。日本の大手電機メーカーは商品ラインアップがAppleより幅広いとはいえ、サプライヤー数が格段に多い。ソニーでは2008年度が約2500社、2013年度が約1000社、2014年3月に250社を重点サプライヤーに指定したものの、その程度を明言しなかった。
2012~2018年における中国本社企業の供給実績を表1に示した。このうち日本での知名度こそが低いが、「不動の常連」というべき地位を確立した3社の横顔を見てみよう。