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サプライチェーンがあらわに

 入札で選ばれた会社名のリストは、構築中のサプライチェーンを示す。YMTCにおける落札件数トップ5は米Lam Research(92件)、米Applied Materials(81件)、東京エレクトロン(67件)、米KLA-Tencor(48件)、日立国際電気から投資ファンドによって切り出されたKokusai Electric(30件)である。なおApplied Materialsは2019年7月にKokusai Electricの買収を発表した。

 落札件数をサプライヤーの本社地域別にカウントすると、YMTCのサプライチェーンは米国に大きく依存していることを確認できた。そのトップ3は米国(340件)、日本(165件)、中国(49件)である。米商務省がYMTCを禁輸命令の対象にすれば、同社は当面、量産規模を拡大できないはずだ。中国AMEC(中微)がドライエッチング装置を5台、中国Naura(北方華創)が酸化膜成長装置を3台、それぞれYMTCに納入予定だが、これらの規模は日米装置メーカーより格段に小さい。

 (c)の政策進捗情報は、各半導体メーカーに出資した省政府や市政府、各メーカーが立地する工業団地運営委員会の公式サイトなどが開示している。安徽省政府辦公庁の計画通知はCXMTの状況をこう記した。「2018年までに191億人民元の予算で各種製造装置を若干台配備する。開発第1期で良好な電気特性を確認した。次は量産に向けて歩留まりを上げる」。一方、YMTCの月産能力が5000枚という情報は市政府督査室の「武漢東湖新技術開発区管委会 第一季度完成情況」というWebサイトに掲載されている2)

 現在、中国勢が生産能力を思うように増やせない最大の原因は人材不足にある。半導体メモリー業界では、液晶パネル業界のような「出物」がまだないからだ。中国BOE(京東方)は韓国Hyundaiグループから、また中国Tianma Micro-electronics(天馬)がNECグループから、それぞれ液晶パネル事業を取得して幅広い工程の従業員を一挙に得た注6)

注6)BOEに対する売り手は、Hyundaiグループの事業を買収していた台湾E Ink(元太)。

 加えて先行メーカーからの転職者も少ない。米Western Digitalは2016年に米SanDiskを買収した。SanDiskからYMTCに大量に転職してもおかしくはない。YMTCは米国シリコンバレーにもオフィスを持っている。しかしそうした転職者はLinkedIn上で16人にとどまっていた。

 経営層の補充もあまり進んでいないようだ。YMTCの経営執行を2016年ころから担い2017年から董事長を務めてきたCharles Kao(高啓全)氏が「DRAM事業群董事長」も担うと、2019年6月にTsinghua Unigroupが発表した。Kao氏は2015年までTaiwan Plastics(台塑)グループのDRAM会社2社を経営したとはいえ、YMTCとの兼務は容易なことではない。Tsinghua Unigroupは前述のUnis南京に加えて、成都市政府と広州市政府とメモリー量産会社を立ち上げようとしている(表3)。

表3 “立ち上げた”工場はまだ企画段階
国策投資会社Tsinghua Unis(清華紫光)はYMTC以外にもメモリー量産計画を市政府と次々立ち上げた。いずれも覚書からの大きな進展はみられない。Haは100アール。(表:筆者)
表3 “立ち上げた”工場はまだ企画段階
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