「中国製造2025」の一丁目一番地ともいえる中国の半導体産業の成長路線─。ところが、ここにきて無謀な巨額投資のツケと米中ハイテク覇権争いの影響が、一気に顕在化してきた感がある。
21年7月9日には、中国の半導体産業振興のメインエンジンといえる清華紫光集団に対して、債権人が裁判所に、破産による再編手続きを進めるよう申請した。同集団は、清華大学が51%出資する半国有企業であり、中国の半導体完全国産化計画を牽引する役割を担う。傘下には、NAND型フラッシュメモリーを手掛けるYMTCをはじめ、数多くの有力企業を擁している。過去には国外の大手半導体メーカーに対するM&Aや株式の大量購入を試みるなど、隙あらば世界の有力企業への影響力を強めようとしてきた。
そこで今回は、紫光集団の動きを中心に、中国の半導体産業の行方について議論した。
破綻も大勢に影響なしが中国流
まずは、紫光集団の今後について。各回答者は、紫光集団に破産・再編の動きが起きても、中国の半導体産業育成の取り組みには、基本的に何の変化もないとみている。
Grossbergの大山 聡氏は、「中国政府にとって、紫光集団のような国営ファンドは、国家プロジェクト推進のためには必要である。問題があれば中身や組織そのものを入れ替えてでも仕組みを維持するだろう。紫光集団の破綻は中国にとってはイエローカード1枚程度の警告で、そのままプレーは続行される」としている。
中国の半導体産業育成の行方を見通す際、米中ハイテク覇権争いによる先進的な技術・製品の禁輸措置の影響を見定めることが、よほど重要とみる意見も多かった。現在、5nm世代など最先端の半導体チップの製造に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置は中国に輸出できない状態だ。ただし、現在起きていることを詳細に観察すると、最先端チップを作れなくても産業育成ができないわけではないという事実が見えてくる。